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ノーベル平和賞騒動で見えた中国のアキレス腱
文化的手法で政治介入を狙う先進国の“懐事情”

真壁昭夫 [信州大学教授]
【第147回】 2010年10月19日
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劉暁波氏へのノーベル平和賞授与が
投げかけた予想以上に大きな波紋

 今年のノーベル平和賞が、中国の人権活動家である劉暁波氏に贈られたことが、世界に大きな波紋を投げかけている。

 劉暁波氏は、天安門事件などを批判する著作が罪に問われ、現在中国政府に収監されている。中国政府は、今回の劉氏の受賞に猛反発し、ノルウェーとの閣僚協議を停止するなどの対抗処置を発表した。中国国内での報道にも、大きな制限をかけているようだ。

 一方、ノーベル賞を送る側のノルウェーは、あくまでも政治介入を排除した委員による「独立選考」との立場をとっている。今後の展開次第では、両国間で政治問題化する可能性も否定できない状況だ。

 今回のノーベル平和賞に関する一連の動きから、2つの重要なポイントが明らかになった。1つは中国の政治情勢だ。

 外から見ていると盤石に見える共産党政権は、実はそれほど強固な基盤を持っていない。それは、ノーベル平和賞について厳しい報道管制を敷かなければならなかったことからも明らかだ。つまり、経済格差や多民族問題を抱える中国では、国民全体が1つになって共産党政権を支持しているわけではない。

 もう1つは、ノーベル平和賞を授与する側の問題だ。今回に限らず、ノーベル平和賞の受賞者に関しては、これまでも様々な物議を醸してきた経緯がある。

 政治介入を排して完全に中立の立場で選定されたという話だが、今回の劉暁波氏に限らず、「チベットのダライ・ラマ14世やミャンマーのアウンサン・スー・チー女史への授与に、何らかの政治的判断が働いていたのではないか」との見方もある。

 「ノーベル平和賞を1つの軸として、世界の政治構造の中でせめぎ合いが起きている」との意見もある。今回のノーベル平和賞は、そうした実情を浮かび上がらせる役割を果たしたと言える。

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真壁昭夫 [信州大学教授]

1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員などを経て現職に。著書は「下流にならない生き方」「行動ファイナンスの実践」「はじめての金融工学」など多数。


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