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一流の睡眠
【第6回】 2016年8月17日
著者・コラム紹介バックナンバー
裴英洙 [医師・MBA/ハイズ株式会社代表取締役社長]

朝イチのプレゼンでも絶好調な人の「眠り方」

睡眠の悩みを解消するための情報は、これまでにも、さまざまなメディアでたくさん紹介されてきました。でも……。

・8時間眠りなさい
・できれば「22時」に眠りなさい
・規則正しく栄養管理の行き届いた食事を摂りなさい
・睡眠時間を確保することから1日をスケジューリングしなさい

「……いやいや、そんなの無理だから!」

そう思ったことはありませんか?

いわゆる「睡眠の常識」と、ビジネスパーソンの実態はかけ離れているのです。そこで本連載では、医師とビジネスパーソン両方の視点と経験を併せ持つ著者が、新刊『一流の睡眠』から、現実的かつ具体的な「睡眠問題解決法」を教えます。

第6回は、朝イチの勝負プレゼンに万全の体調で臨むためのコツを紹介します。
 

絶対に失敗できないプレゼンでベストパフォーマンスを出す方法

「気合いの焼肉」や「半身浴」が
逆効果になる理由

 ビジネスパーソンには、人生を左右するような「勝負時」が必ず訪れます。絶対に結果を残したいと思うあまり、前日の夜に「いつもと違うこと」をやろうとする人が少なくありません。

 「いつもより2時間多く睡眠をとって冴えた脳でプレゼンに臨もう!」
 「パワーをつけるために前日は焼肉を食べよう!」
 「ぐっすり眠るために、いつもはしない長めの半身浴をしよう!」

 気持ちは良くわかります。しかし、前日の夜にいつもと違うことをすると、熟睡できずに翌日への悪影響が大きくなるリスクが高いのです。いつもと異なるスタイルを無理に取り入れると、生活リズムが乱れます。生活リズムが乱れれば、睡眠は不十分になるという悪循環です。

 私も、コンサルタントになった駆け出しの頃、大きなイベントを前に眠れないという経験を何度もしました。

 悶々としすぎた結果、痛い目に遭ったこともあります。ある大切なプレゼンの前日、私は直前までパワーポイントのスライド構成に悩んでいました。構成変更を夜通し繰り返し、結局納得のいかない資料のままプレゼンに臨んだ結果、寝不足で頭が回りませんでした。プレゼンもしどろもどろになり、発表後の質問にもうまく答えられず、非常に恥ずかしい思いをしました。

 その失敗を経験してから、大きなイベントの前夜には、普段と異なるスペシャルなことはしないことを決めました。つとめて、いつも通りに過ごすのです。それ以来、プレゼンの成果のブレがほとんどなくなりました。

月曜の睡眠を犠牲にすると
水曜の朝が絶好調になる

 いつもと違うことの代表例が、「いつもより早く寝る」です。早めに布団に入ったものの、「早く寝なければ」と意識すればするほど目が冴えて、結局いつもより眠れなかった、という経験はありませんか?

普段の就寝時刻より2~3時間ほど早い時間帯は、もっとも眠りにくい時間帯です。いつも0時に寝ている人ならば、21~22時にあたります。この時間帯に眠ろうとすることは、一番非効率なことをやっていることになります。眠れない時間が続くと、余計なストレスも生まれます。

 そこで、ちょっと発想を転換してみましょう。前日の睡眠で翌日に備えるのではなく、「2日前」の睡眠時間をコントロールするのです。

 たとえば水曜日の朝にプレゼンがあるとしましょう。多くの人は「火曜の夜さえぐっすり眠れれば」と考えます。そうではなく、少し時間軸を伸ばして「月曜日の夜」から水曜朝に備えます。つまり、月曜日の夜の睡眠を少し削り、火曜日を意図的に睡眠不足で過ごすのです。

 火曜日は、翌日を控えて嫌でも緊張感を伴うことになるでしょう。しかし、睡眠不足状態で過ごせば、いくら脳が興奮していても、いずれ自然な眠気に襲われます。火曜日の「睡眠圧※」を高めて夜に熟睡するために、月曜日の睡眠を犠牲にするのです(※自然な睡眠へ導くはたらきのこと)。

 この時に注意すべきは、前日の火曜日の就寝直前にパソコンで資料を見直したりしないことです。パソコンの光は神経を高ぶらせ、良質な睡眠を妨げます。それまでにみっちりと下準備し、前日は睡眠不足気味で過ごす。一度試してみてください。

 ただし、この方法は「肉を切らせて骨を断つ」発想です。生活リズムの面から考えれば、頻繁に実践するべきものではありません。本当の勝負時のための、とっておきの方法だと考えてください。

 勝負の日前夜の睡眠不足を避けなければいけない、もう1つの理由があります。睡眠中は脳の中で記憶の整理が行なわれます。昼間に得た情報は、一時的に脳の「海馬」に蓄えられ、睡眠中に記憶として大脳皮質に刻み込まれます。

 つまり記憶は睡眠によって脳に定着するわけですから、スラスラとプレゼンするためには、前日にしっかり睡眠をとらない手はないのです。前日にぐっすり眠ることで大切な記憶を定着させ、勝利をぐっと手元に引き寄せるのです。 

 

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裴英洙 [医師・MBA/ハイズ株式会社代表取締役社長]

はい・えいしゅ/医師・医学博士、MBA。ハイズ株式会社代表取締役社長。

 

1972年奈良県生まれ。 金沢大学医学部卒業、金沢大学大学院医学研究科修了。金沢大学医学部卒業後、金沢大学第一外科(現・心肺・総合外科)に入局し、大学病院や基幹病院を中心に、主に胸部外科(肺がん、心臓病など)に従事し、日々手術に明け暮れる。その後、金沢大学大学院に入学し、外科病理学を専攻し医学博士を取得。さらに、病理専門医を取得し、市中病院にて病理医として病気の最終診断にかかわり、年間1万件以上の重大疾病の診断をこなす。

また、医師として働きつつ慶應義塾大学大学院経営管理研究科(慶應ビジネス・スクール)にて医療政策・病院経営の第一人者の田中滋教授に師事。同ビジネス・スクールを首席で修了。フランスグランゼコールESSEC大学院交換留学。ビジネス・スクール在学中に医療機関再生コンサルティング会社を設立。多数の医療機関の経営支援、ヘルスケア企業の医学アドバイザー業務などを行なっている。 現在も医師として臨床業務をこなしつつ、臨床の最前線からのニーズを医療機関経営に活かすハンズオン型支援を行なう。

著書に『10の仕事を1の力でミスなく回すトリアージ仕事術』『なぜ、一流の人は「疲れ」を翌日に持ち越さないのか』(ダイヤモンド社)、『医療職が部下を持ったら読む本』(日経BP社)などがある。

 


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