睡眠の悩みを解消するための情報は、これまでにも、さまざまなメディアでたくさん紹介されてきました。でも……。
・8時間眠りなさい
・できれば「22時」に眠りなさい
・規則正しく栄養管理の行き届いた食事を摂りなさい
・睡眠時間を確保することから1日をスケジューリングしなさい
「……いやいや、そんなの無理だから!」
そう思ったことはありませんか?
いわゆる「睡眠の常識」と、ビジネスパーソンの実態はかけ離れているのです。そこで本連載では、医師とビジネスパーソン両方の視点と経験を併せ持つ著者が、新刊『一流の睡眠』から、現実的かつ具体的な「睡眠問題解決法」を教えます。
第5回は、現実的かつ効果的な「昼寝」について、まじめに解説します。
ランチをとった後、眠気のせいでしばらく仕事に集中できず、パフォーマンスの低いムダな時間を過ごしてしまう……。これは、多くのビジネスパーソンに共通する悩みだと思います。私自身も、かつてはこれで何度も「撃沈」していました。
眠気が訪れる時間帯は、ズバリ「午後2~4時」が多いと思います。これには医学的に説明できる2つの原因があります。その原因を踏まえてから、対処法を考える必要があります。
ランチを「腹八分目」にしても
睡魔は必ず襲ってくる
昔から「食事は腹八分目がいい」と言われます。これには明確な理由があります。目を覚ます働きがある「オレキシン」というホルモンが、食事を摂ると抑制されるのです。つまり、食事を摂ると「目を覚ます力」が下がり、眠くなるのです。
具体的には、食事を摂って血糖値が上がることによってオレキシンが抑制されます。逆に言えば、空腹状態ではオレキシンの分泌は増加しますから、睡眠前に極端な空腹状態だと、目がギラギラして寝つけなくなるのです。
あまりに忙しくて食事を摂れなかったのに、なぜだか妙に頭が冴えて仕事がはかどった、という経験はないでしょうか。これは、オレキシンが引き起こす覚醒作用による効果が大きいと言えます。
人間が1日に2回
「必ず」眠くなる理由
一定のリズムを保って生活していれば、人間は1日に2度、眠気のピークが訪れます。最大のピークは午前2~4時で、眠りが最も深くなる時間帯です。そして2回目のピークが訪れるのが、午後2~4時なのです。「食事の影響で眠くなる」という以外に、そもそも人間の生体リズムという避けがたい理由で、ちょうど昼食後に眠気が訪れてしまうわけです。
つまり、午後2~4時の時間帯は、昼食後のホルモンバランスと生体リズムという、避けがたい生理現象のダブルパンチで眠気に襲われることになります。
そこで、日中のパフォーマンスをできる限り落としたくないビジネスパーソンにできることは、まず、オレキシンの分泌を抑制しすぎないよう腹八分目を心がけることです。そして、どうしても眠気に勝てなくなった場合は、勇気を持って生体リズムに身をゆだねて一定時間昼寝するのが一番効果的です。
ここからは、不謹慎に思われがちな「勤務時間中の昼寝」の効用と方法を、パフォーマンスの向上のために真面目に考えていきます。