「率直に言って、私たちは騙(だま)されたのだ」。メディアや自動車専門家が米ゼネラルモーターズ(GM)への批判を強めている。11月に発売される自称“長距離電気自動車”の「シボレーボルト」が、当初の触れ込みとは異なり高速走行時などでガソリンエンジンからも直接駆動力を得ることが判明したためだ。同社関係者は、より良い製品に仕上げるための変更だったと主張するが、消費者に失望が広がれば、ボルトは、病み上がりのGMにとって、救世主どころか、足を引っ張る疫病神ともなりかねない。
(文/ジャーナリスト、ポール・アイゼンスタイン)
米ゼネラルモーターズ(GM)が11月、再生の象徴(と目されていた)「シボレーボルト」をついに発売する。このいわゆる「長距離電気自動車」(Extended Range Electric Vehicle、E-REV)は、GMが持てる技術の粋を結集して開発したものとされ、GM復活の狼煙になると期待されてきたものだ(同社自身が「自動車による移動を再創造する」と宣言し、そう世間に信じ込ませてきた)。しかし、発売を前に、GMはかつての「ウォーターゲート事件」のような情報隠蔽をやったのではないかとの批判にさらされている。
当初の構想では、この「ボルト」は純粋にバッテリー駆動だけで走行するよう設計されていた(少なくともGM関係者はそう公言していた)。1時間あたり16キロワットの出力を誇るリチウムイオン電池により、電動モードだけで約40マイル(64.4キロ)の航続距離と時速90マイル(144.9キロ)以上のスピードを実現するとされていた。
しかし、驚いたことに、知らぬ間にこの「ボルト」にはいくつかの重大な変更が施されていた。一つは、航続距離だ。GMは突然、「ボルト」のバッテリー駆動のみによる航続距離は正確には25~50マイル(40.25~80.5キロ)のあいだであり、路面・天候や個々の運転パターンによって変わってくる、と主張しはじめた。
もうひとつは(こちらのほうが深刻な変更点だ!)、「長距離電気自動車」という名称の正当性に関わる基本的な駆動システムに対するものだ。
当初の「ボルト」の売りはこうだった。従来のバッテリー駆動電気自動車(BEV)と異なり、「ボルト」はバッテリーが消耗しても走り続ける能力を持っている。その秘密は、小型の直列4気筒ガソリンエンジンで、バッテリーが消耗するとこれが自動的に点火される。構想では、このいわゆる「シリアル(逐次)・ハイブリッド」設計は、「ボルト」のモーターを駆動する電力を発生させるためだけにガソリンエンジンを用いるものだった。
ところが、9月21日付けでGMが取得した特許を注意深く調べてみると、これは正確ではないことが判明した。運転効率(つまり最大航続距離と性能)を改善するため、GMの言う「ボルテック推進システム」の核心である電気駆動ユニット「4ET50」には、いくつかの変更が加えられたのである。