中国は国土が広く、固定電話の電話網を拡げることが困難でした。そこへ携帯電話普及の波が押し寄せ、結果として携帯大国となっています。現在の中国は世界最大のモバイル市場で、8億人の携帯電話ユーザーを保有しています。中国の携帯電話3大キャリアは中国移動、中国聯通、中国電信の3社です。

 この中で一番規模が大きく、中国の携帯電話市場でシェア約7割を握るダントツのトップ企業が中国移動です。2009年末の新規加入者は5億2228万人であり、2010年上半期だけで3176万人もの加入者の拡大があり、今なお拡大中です。営業からのキャッシュフローで2.7兆円を稼ぎ(2010年7月末の1元=12.76円で計算)、そこから2兆円もの巨額の設備投資を行っている稼いでいる大企業です。

 このようなプロフィールがあるものですから、日本の多くの方は中国の携帯キャリアは力強く成長を続けていると考える方が多いかもしれません。しかし、意外にも現在中国の携帯キャリアの業績は伸び悩んでいるのです。これにはいくつか理由があります。

意外にも収益・株価が
伸び悩んでいる中国携帯キャリア

 まず、さすがに携帯電話普及率が高まりつつあり、ユーザー数の拡大が鈍化しつつあることです。そして、2009年からスタートした3G(第3世代携帯電話)をキッカケとして各キャリア間の競合で通話料金が引き下げられ、音声通話収入が減少しています。このため、中国の通信キャリアの業績成長は減速傾向にあり、株価も大きく伸び悩んでいるのです。

 なお、中国の3Gには3つの通信方式があり、中国移動は中国国産開発技術のTD-SCDMAを担当し、中国電信(元々は固定電話事業社)には中国聯通(第2位の携帯電話事業社)より譲渡してもらったCDMA(2G)をCDMA2000(3G)にアップグレードして担当させ、中国聯通はW-CDMAを担当しています。

 これには中国政府の意図があります。これまで中国移動が携帯電話で圧倒的なシェアを築いたわけですが、固定電話の中国電信にも免許を持たせることによって健全な競争原理を導入させようという狙いです。