「電通女性社員自殺」の根本原因は、
「働きすぎ」だけではない!

電通過労死事件で考える「人材使い捨て職場」改革法シンガポールのマリーナベイサンズ前で、今日本企業が構築すべき企業文化について熟考する筆者

 先週話題になった、こんな記事をご存じだろうか。

NHKの出待ち取材で「自浄能力のない会社だ」等と感想を述べた20代の電通社員に、始末書を書かせて「戒告」の懲戒処分を下していたとのことだ。〉(出典My News Japan:「電通、NHK取材に「自浄能力がない」と感想を述べた若手社員を「戒告」の懲戒処分にして自浄能力のなさを改めて示す」

 実際に懲戒処分が下されたかどうか確かではないにもかかわらず、このニュースは連日ネット上で話題となった。この報道が真実であれば、履歴書に残る「戒告処分」で20代の若者の将来を奪うことになる。

 今回の懲戒処分の件を除いても、一連の電通報道を見るうちに、ある言葉を何度も思い出した。それは、経営の神様ピーター・ドラッカー博士の言葉「Culture eats strategy for breakfast.」だ。

 和訳すると「文化は戦略を朝食に食べる」となる。意訳では「文化は戦略を簡単に食べてしまう」、さらに「どんな緻密な戦略を立てるよりも、優れた企業文化を構築することが重要である」という言い方ができるだろう。

 筆者にはこの言葉が重く感じられる。経営者や人事担当者、企業のリーダーたちの一番の仕事は、優れた企業文化を創ることなのだ。

 そしてもう1つ、気になることがある。一連の電通問題の発端となった、「電通女性社員自殺」の根本原因だ。

「働き過ぎで尊い命を落とすことがなくなるように、(中略)働き方改革をしっかり進めていきたい」というコメントを見ると、政府としても「長時間労働」の改善に注力しているように見受けられる(出典:産経ニュース【安倍晋三首相「政府としても『働き方』見直す」】)。