DOL特別レポート
2017年1月11日 安藤広大 [識学代表取締役社長]

残業を減らしたければ部下の「頑張る姿」を評価するな

長時間労働や残業は、なかなか減らない。その原因として「頑張っている姿」を見せる文化や「残業代が貴重な収入源」という問題もあるが、上司の何気ない言動が部下の頭の中の「優先順位」を崩壊させ、無駄な労働時間を増やしている。(株式会社識学代表取締役社長、組織コンサルタント 安藤広大)

長時間労働の根源は
「頑張っている姿」の評価

 長時間労働の要因は、会社側が要求する業務が、個人のキャパシティをはるかに超えているという場合も多いでしょう。その場合の対策は、人員体制、業務の見直ししか方法はありません。

 しかし、長時間労働の要因は、これだけではありません。つまり、長時間労働をなくせる方法は「他にも方法がある」ということです。

 長時間労働の根源の一つは、「頑張っている姿」を評価するという文化です。成果ではなく、「いかに頑張っているか」「積極的に取り組んでいるか」というプロセスが「評価のウエイト」の多くを占めることが要因です。

「長く働いている」→「頑張っている」→「評価が上がる」ということになるために、むしろ、長時間労働することが、「良いこと」とされている企業が多いというのが現実でしょう。

 そして、もう一つの要因は多くの企業で「時間に対して給料が支払われている」という現実です。これは、現在の日本の法律ではどうする事もできないことですが、このことも間違いなく、長時間労働を助長している要因です。

 長時間労働すれば「評価が上がり」、残業代で「給料も増える」。これでは、逆に長時間労働をしない理由が見つかりません。

 それでは、どうすれば良いのでしょうか。答えは簡単です。すべて「結果」で評価をすることです。そして、その評価と給料を連動させれば良いのです。

「頑張っている」や「積極的に取り組んでいる」という、抽象的なプロセス評価を取り除き、すべて「結果」という事実で評価をするように切り替えていくことが大切です。

「長く働いて」と、頑張っている姿を見せることは、まったく評価に値しないということを評価される側にも明確に示すのです。

 評価される側からは、

 「もっと、頑張っている姿も評価してほしい」
 「結果だけで評価するなんて、優しくない上司だ」

 という言葉も出てくるでしょう。

 しかし、これを聞き入れている限り、長時間労働はなくなりません。また、部下の成長を阻害する事にも繋がります。

 なぜなら、営利組織においての成長とは、「時間帯あたりの生産性が上がる」ということに他ならないからです。いかに短い時間に、いかに生産性を高めることができるか、という機能を鍛えるためには、プロセスを評価してはいけないのです。

プロセスを評価すれば
「アピール技術」のみが成長する

 どうして、プロセスの評価をしてはいけないのでしょうか。

 プロセスを評価してしまうと、「いかに時間帯あたりの生産性を高めるか」より、「いかに良いプロセスをアピールするか」に思考が奪われてしまうからです。そして、部下は「アピール技術」のみが「成長」してしまうのです。

「結果」だけを評価するというのは、営業でいうならば、「売上」という「最終結果」しか評価してはいけないということではありません。

 例えば、「何件訪問した」「何件提案した」というのも「結果」です。レベルに合わせて、求める「結果」を明確にして、それを評価していけばいいのです。

「別に、長い時間働いていることでアピールをしているわけではない。単純に忙しいから長時間労働になっている」

 確かに、そういう方も多くおられるでしょう。

 私が、コンサルティングをしている時に、こういう質問をすることがあります。

「『忙しい』時にはどういう対策を取りますか?」

 そうすると、多くの場合、

 「人を増やす」
 「長く働く」
 「アウトソーシングする」
 「仕事を減らす(他の部署に振る)」

 といった答えが返ってきます。

仕事にかかっている
時間を短縮する

 しかし、不思議と「一つの仕事にかかっている時間を短縮する」という答えは返って来ないのです。

 2つ目の長時間労働に対する対策は、「時間を短縮する」ということです。

「何を当たり前のことを言っているんだ」という風に感じた方もおられるかもしれません。しかし、この「当たり前のこと」を意識し続けてマネジメントに取り組まれている方は、あまり多くありません。

 それでは、この「当たり前のこと」を意識し続け、なおかつ、マネジメントができているとは、どういう状態を指すのでしょうか。

 それは、

 「部下への指示に対して、常に期限設定ができている」
 「部下が提示してきた、一つの仕事にかかる時間を常に『疑う』ことができている」

 という状態です。

 まず、部下が取り組む業務に「期限の設定がない」ということは、部下が「時間を短縮する必要性がない」という状態です。

 これでは、そもそも「時間短縮」は起きようがありません。自分のペースで、「期限の目標」もないまま、集中力の低い状態で仕事を進めてしまいます。

部下が提示する「期限」を
「疑う」ことも大切

 部下が提示してきた「期限」、部下が認識している「必要な時間」を「疑う」ことも大切です。

 例えば、部下と次のようなやりとりをしていないのでしょうか。

 「この仕事どれくらいでできる?」
 「大体1時間くらいで、できそうです」
 「そうか、じゃあ1時間でやってくれ」

 「これ、2時間でやってくれ」
 「いや、2時間は難しいです。3時間はかかります」
 「じゃあ、3時間で」

 これでは、「時間短縮」は起きにくいでしょう。それぞれに持っている「時間に対する感覚」はバラバラです。部下が持っている時間の感覚に合わせて、管理者が期限設定をしてしまっては、部下の時間に対する感覚が鋭くなることはありません。つまり、「時間短縮」ができることはないのです。

 上司は、

 ◎必ず、指示に期限を設定すること
 ◎期限は、部下の認識している期限より少しでも手前に設定すること

 を心がけてください。

「期限設定するだけで、仕事の時間が短くなるわけない」

 そんな声が聞こえてきそうです。

 でも、これで必ず短くなります。しかし、まだ不十分であるのも事実です。

「期限を意識して、できる限り、早く仕事を終わらせようとはしているが、なかなか上手くいかない」

 単純に能力が足りないというのであれば、反復して能力を高めていくしかありません。しかし、「能力以外に要因がある」というのであれば、その要因はただ一つです。

上司の言動のために
部下の優先順位が決まらないことも

 それは、「優先順位が決まっていない」ということに尽きます。

 仕事をする上での最大のロスタイムは、

 「えーっと、次、何しようかな」
 「えーっと、この仕事、どこまで進んでたかな」

 という、「仕事」と「仕事」の移動に使う時間なのです。

 期限設定をしても、なかなか仕事が速くならない部下がいるのであれば、優先順位がついているかを、確認してあげるようにして下さい。

 また、上司の言動によって、「優先順位」が決まらないことも多々あるので、注意すべきです。

 一つは、上司の指示における期限設定が曖昧であることです。

 「なる早でやっといて」
 「できる時にやっといて」

 これでは、今、自分が持っている仕事の何番目に並べていいかわかりません。

 そして、上司から、

「まだ、できてないの?早くやってよ」

 と言われて、自分の中での「優先順位」が崩壊をするのです。

複数の上司の指示が
部下の動きを停滞させる

 もう一つの要因は、複数の上司から指示を受けることです。

 組織図上、上司が2人以上いることも稀にあるかと思いますが、それは珍しいでしょう。しかし、部を跨いだプロジェクト等で、隣の部署の上司と仕事をする機会というのは少なからずあるかと思います。

 その時に、直属の上司であるA課長と、プロジェクトでリーダーのB課長から同時に指示を受けると、部下は「優先順位」を決めることができないのです。

 これでは、部下にはまったく非がありませんし、解決の方法はありません。なぜなら、部下には「どちらを優先すべきか」というのを、判断できる機能がないからです。

 このように、部下の動きが停滞するというのはよく起こることです。

 では、どうすれば良いのでしょうか。

 部下の業務における「優先順位を決定できるのは直属のA課長である」という点を、組織内で明確にしておくことです。B課長は、プロジェクトリーダーではありますが、上司ではありません。A課という「会社」の一社員に仕事を発注するという感覚で、B課長は部下に接するようにしないといけません。

 あくまでも、A課とB課の取り決めの中で、部下に指示をすることが大切です。

 B課長が事前に取り決めた以外のことを言い出した時に、部下には判断する機能はなく、優先順位が決まらずに停滞してしまうのです。

 何かA課長とB課長の指示に相違を感じたときに、「どちらを優先すべきか」の判断に迷ったら、部下は「A課長にのみに、相談すれば良い」という認識を合わせておくことが大切です。