『週刊ダイヤモンド』10月21日号の第1特集は、「パナソニック・トヨタが挑むEV覇権」です。世界で電気自動車(EV)シフトが加速している。主要国・自動車メーカーがそれぞれの思惑を抱えながらEVへ舵をきっているのだ。新旧入り乱れるゲームチェンジャーがたたきつけた「挑戦状」にトヨタ自動車はどう応えるのか いささか過熱気味の電気自動車(EV)ブーム。フランス、英国、ドイツの欧州主要国、インド、中国がガソリン車などの内燃機関車を禁止する政策を矢継ぎ早に繰り出した。世界の大手自動車メーカーも一気にEVの販売目標を掲げ始めている。

  いささか過熱気味の電気自動車(EV)ブーム。フランス、英国、ドイツの欧州主要国、インド、中国がガソリン車などの内燃機関車を禁止する政策を矢継ぎ早に繰り出した。世界の大手自動車メーカーも一気にEVの販売目標を掲げ始めている

  今回のEVシフトは、主要国政府や自動車メーカーの思惑が複雑に絡み合ってつくり上げられたものだ。

 発端は、独フォルクスワーゲン(VW)によるディーゼル不正問題だ。インチキなディーゼル車では、2021年に導入される欧州の環境規制に対応できなくなってしまったため、VWはEVへシフトせざるを得なかった。

 それでも、転んでもタダでは起きないのがドイツメーカーらしい。「25年までに世界でEV300万台を販売する」と高らかに宣言した。不祥事をみじんも感じさせない野心的な目標には、中国市場の獲得という狙いも含まれている。

 主要国政府の中では、欧州各国と中国がEV導入に意欲的だ。両者に共通しているのは、自国の環境エネルギー政策を遂行するためにEVシフトを進めようとしていること。ただし、中国だけは、環境汚染の解消やエネルギー需給のためというよりも、産業政策を推し進めたいという思いが強い。

 つまり、中国・習近平政権は、日米欧で牛耳ってきた自動車産業のゲームチェンジを起こしたいのだ。

 これまでも、中国企業はガソリン車やハイブリッド車の技術で本気で追随しようと開発してきたが、

先を行く日米欧に追い付き追い越すことは容易ではなかった。ガソリン車からEVの時代が来ると、世界のプレーヤーが「ヨーイドン」の横一線で開発をスタートさせることになる。雨後のたけのこのように生まれる中国ベンチャーでもEVは容易に造れてしまう。

 最後に、米テスラの存在も忘れてはならない。登場したばかりのころは、大手自動車メーカーから相手にされることもなかったが、今やEVの先駆者としてベンチマークされる存在で、中国市場でのシェア拡大に挑む。

 世界最大の自動車メーカーであるVW、世界最大の市場規模を持つ中国、先駆者のテスラ──。3者の動きの連鎖がEVドミノを演出したともいえる。

 翻って、ガソリン車時代の王者、トヨタのEVに対する動きは鈍い。新旧入り乱れるゲームチェンジャーがトヨタを潰しにきている。

 

超レガシー企業
パナソニック・トヨタの試練

『週刊ダイヤモンド』10月21日号の第1特集は、「パナソニック・トヨタが挑むEV覇権」です。

 経済産業省出身でEVベンチャーを起業した伊藤慎介・リモノ社長によれば、「今回4度目のEVブーム」だそうです。

 今の日本勢の劣勢からはとても想像できないのですが、かつて、日本はEV大国でした。過去3度のEVブームを通じて、常に日本勢が先頭を走っていました。環境規制やエネルギーなどの足枷が“非連続な”技術革新を生んできたからです。

 そして迎えた「4度目の正直」。今回のEVシフトは、これまで日米独が牛耳ってきた自動車産業を破壊するインパクトがあります。

 しかし、トヨタを筆頭に日系自動車メーカーのEVに対する本気度はイマイチ感じられません。

 特集では、日本を代表するレガシー企業─パナソニックとトヨタ─を主役に見立てて、EV覇権の行方を追いました。

 トヨタより一足早くEVへ舵を切ったパナソニックの津賀一宏社長には、博打と批判される「米テスラ依存投資の勝算」についても聞いています。

 EVを突破口に起きる自動車産業のゲームチェンジ。日本の製造業は今、大きな試練を迎えています。