地方財政が逼迫している。現在の社会構造に対応できていない税収体制に追い討ちをかけるように、リーマンショック後の不況で生活保護などの社会保障関係費が拡大しているためだ。“地方分権”を盛んに叫んでいた民主党だが、それを実現する前に地方財政は立ち行かなくなりそうだ。では、一体何が問題の根源であり、どうすれば地方自治体は再生することができるのだろうか? 再生の秘策を、北海道大学公共政策大学院の宮脇淳教授に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林 恭子)

危険水域に入った地方財政
もはや増税は避けられない?

――現在、多くの地方自治体が非常に厳しい財政状況に追い込まれている。その原因として、リーマンショック以降の経済不況を挙げる人もいるが、こうした状況になった本当の原因とは何か?

宮脇敦
みやわき・あつし/北海道大学公共政策大学院教授。専門は、行政学・財政学。 日本大学法学部卒業後、参議院事務局、日本総合研究所調査部主任研究員等を経て1996年に北海道大学法学部・大学院法学研究科教授に就任。1998年、日本総合研究所主席研究員に転じ、1998年10月に再び北海道大学大学院法学研究科教授に復帰。2007年4月1日に内閣府参与及び地方分権改革推進委員会事務局長に就任。著書は『公共経営論』『財政投融資と行政改革』など多数。

 リーマンショック以降の不況は、確かに地方財政に影響を与え、今後も影響を与え続けることは間違いない。2010、2011年度は各自治体が予想する以上に厳しい年になるだろう。ただ、この不況に関係なく、少子高齢化やグローバル化のなかで、日本の地方財政は構造的に限界を迎えていることも確かである。

 十数年前から発行され始めた臨時財政対策債(臨対債)の状況を見れば、それは一目了然だ。臨対債は、税収が落ち込んで予定額に満たない地方交付税交付金を一時的に穴埋めするために生まれたもので、その発行残高と発行額は毎年増え続けている。

 臨対債の増加が何を意味するかというと、本来自治体の財源の偏在を調整するための交付金を賄う十分な税収が確保できない構造に陥っているということだ。さらに今後は、少子高齢化が避けられない。では、追い詰められた財政に早急に対処するにはどうすべきか。選択肢は2つだ。

 まず、決められた仕事を賄えるだけの収入を増やすという方法、つまり増税である。もう1つの選択肢は、今まで自治体が担っていた仕事を身の丈にあわせて小さくすることだ。市町村自治体でできないことは、都道府県や国に戻す。つまり、歳入と歳出のどちらを調整するかである。

財政構造はすでに限界
自治体間連携が必須

――では、増税をしただけでこの問題を解決できるのか?

 人口減少による納税額の減少が避けられない現状では、増税は一時的な処方箋に過ぎない。したがって、住民が自分たちで町づくりや公共サービスを支えていくような行政の仕組みに変化していく必要がある。とはいうものの、限界集落においては住民も高齢者ばかりとなっており、これは現実的ではない。