小沢一郎の離党で民主党は大騒ぎだが、参議院に送られた消費税法案の成立は動かない。政局が荒れようと政党が揺らごうと消費税だけは通す。揺るぎない執念で増税を画策した財務省の完勝である。

大勝ちした反動が怖い

 財務省は密かに快哉を上げている、と思ったら「それは主計局のことでしょ。役所の中には異論もあります」。上層部の一人はそんなふうに言う。中堅幹部には「今回は完勝です。しかしやり過ぎ。先の展望は全く立たくなった」と語る人もいた。

 政治家まで動かす主計局は野田政権になって、さながら政局の参謀本部だが、その突出ぶりに疑問を抱く官僚も少なくない。

「消費税を10%に上げたからといって財政再建の道筋がついた、というものではない。はじめの一歩を踏み出した、といわれていますが、こんなやり方では二歩目がおぼつかない」

 そんなふうにいう官僚もいた。

 なぜ、第2歩が踏み出せないのか、を問うと「税と社会保障の一体改革といえば、多くの人は社会保障を充実させるために税金を上げる、と思うだろう。しかし現実はそうならない。これからつらい時代が始まる。大勝ちした反動は必ず来る。財務省が前面に出て政治を引っ張ったのだから、反発や怨念が吹き出すことは十分考えられる」というのだ。解説してくれたのは40代の官僚である。きちんとした財政ビジョンを示さずに「このままでは破綻する」という浅薄なキャンペーンで突っ走ったことの咎めに、やがてぶち当たるのではないか、というのである。

 財務省OBの民主党議員はこういう。

「税と社会保障の一体改革というのは、増税しその上で社会保障を削るということです。無駄な社会保障にメスを入れない限り、財政再建はできない」

 なるほどそういうことか、と思うが世の中にそんなメッセージは届いているだろうか。