連載第12回は、高収入の代名詞である医師の中で、年収が低く、労働環境が悪く、成り手が少ないことで知られる法医学の現場を仕切る教授を紹介しよう。現在、国公立大の予算は縮小しているが、法医学もまた、その影響を受けている。もともと劣悪な環境が、一段と悪化している。この教授は、日頃から様々な機会を通して、法医学者の労働環境の改善を訴えている。

 あなたは、生き残ることができるか?

 なお、本人の了解により、今回も実名でお伝えすることをお断りしておく。


今回のシュリンク業界――法医学

 医学の1つの分野。各大学の法医学教室では、警察の依頼により、不審遺体などの司法解剖が行なわれている。昨年3月の震災では、各大学の法医学者らが被災地の遺体安置所に赴き、死体検案業務に携わった。

 2007年、大相撲の時津風部屋で力士が暴行され、死亡した事件では、警察の判断で司法解剖が行なわれず、事故死として処理された。遺族やマスメデイアの指摘でそれが問題視され、改めて正確な死因判定の尊さがクローズアップされた。

 警察が扱う変死事案は増えているが、解剖を担当する解剖医のポストは減り続けている。大学は法人化され、成果が評価されやすい分野や収益につながる分野には力を入れるものの、法医学などの環境を熱心に整備する機運には乏しい。法医学者がいる法医学教室のポストは少数になり、医学の分野では労働環境が恵まれない職場となりつつつある。


「妻より収入が少ない……」
法医学者は医師の中の下層社会?

「勤務医の妻は自分より収入が多いから、頭が上がらない。医師になって20年が過ぎたけど、年収は同世代の開業医や臨床医よりはるかに低い。3年目の研修医の年収のほうが、多い場合さえある」