厚生労働省の医師・歯科医師・薬剤師調査は2年に1度行われ、年末時点での医師の戸籍を調査する。2008年調査によれば、医師総数は28万6699人で、人口10万人対医師数は224.5人となり、2006年調査にくらべ7.0人増加している。
出典:厚生労働省
「日本は医師不足だ」とよく指摘されているが、本当に不足しているのか――。
一見、数字だけみると日本の医師数は増加しているため、そうした疑念を持たれるかもしれない。しかしそこには、厚生労働省の医系技官や高齢で現役を退いた医師、社会医学者、法医学者など直接医療行為を行わない医師や、さらには幽霊部員のような医師までカウントされていることを忘れてはならない。つまり、医師は医師免許を得ると死亡や失踪又は免許取消の行政処分により抹消手続がなされない限り、現役医師としてカウントされるのである。加えて、日本の平均寿命の伸びや、一時期の医学部学生増員などもあり、右肩上がりのグラフになるのは当然だ。
現場の実態を把握していない?
医師不足を引き起こした“政策”
旧厚生省は、1970年に最小限必要な医師数を目標設定し、1県1医大構想を推進してきた。そして1県1医大構想に基づき、医科大学・医学部が存在しない県に医科大学・医学部を新たに設置、その結果、医学部入学定員は1984年に過去最高の8280人となった。
出典:文部科学省のデータより
こうした対策の成果もあり、医師数は1983年に人口10万人当たり150人を超えた。
ところが、この目標・構想にブレーキがかかることになる。“将来の医師過剰”が懸念されるようになったのだ。そのため、人口10万人当たりの医師数が150人を越えた前年の1982年には、医学部定員削減を閣議決定(1997年にその継続を再度閣議決定)し、1986年から医学部入学定員の10%削減が行われた。