株式相場は、5月下旬以降は一進一退であるものの、昨年来、趨勢的には上昇基調にある。本来であれば、個人投資家は、このアベノミクス相場に乗って、少なくとも平均株価の上昇率程度の利益を確保しているはずなのだが、必ずしもその利益水準に達していない投資家が多いのではないだろうか。その理由は、日本独特の投資信託の設計や販売方針にある。そして、それは、日本のファンドマネジャーの質の低下という問題に繋がり、それがますます個人投資家の投資利益を圧迫するという悪循環になっているのではないだろうか。
手数料が高すぎる日本の投資信託
年金積立金管理運用独立法人(GPIF)の推計値によれば、日本株式の期待リターンは年率4.8%、国内債券の期待リターンは年率3%、海外株式の期待リターンは年率5%、海外債券の期待リターンは 年率3.2%である。
期待リターンとは、歴史的なデータから、各々の投資商品が平均して何パーセントの利益を生むかという指標である。アベノミクス相場によって、昨年末から今年5月中旬までの期間を取れば株式の期待リターンは短期的には大きく膨らんだ一方、騰落率(ボラティリティー)も高まっているので、短期的な売買では大きな損失を生むリスクもある。個人投資家が使う指標は、GOPIFが用いているように、より長期の推計値であるべきだろう。
日本の投資信託は、主としてこれら4つの資産のいずれか、またはその組み合わせに投資をするものであり、幅広い銘柄を一人で調査することや、売買をすることが困難な個人投資家にとっては、本来、投資信託は頼りになる投資手段のはずである。しかし、なぜか投資信託を買っても、上記のようなリターンが出ている実感がない投資家が多いのではないだろうか。その理由は簡単である。手数料が高いのだ。
投資信託の場合、手数料は、①販売会社(銀行・証券会社など)が販売時に徴求する「販売手数料」、②委託会社(運用の指図を行なう運用会社)・受託会社(財産管理を行なう信託銀行など)・販売会社の3者が分け合う「信託報酬」、③その他の費用(監査費用など)があり、投資家は、投信を購入した年には、①②③の合計額を手数料として支払うことになる。その料率は、若干の幅はあるものの、①の販売手数料が概ね2~3%、②の信託報酬が1.5~2%であるが、③については実費請求とされており、事前にわからないものが多い。