中国に近づく韓国と日本に近づく北朝鮮
朝鮮半島をめぐる不可思議な動きの背景

 最近北朝鮮が、わが国の拉致被害者の調査に関して歩み寄りの姿勢を示している。そうした北朝鮮の動向を見ると、どうも朝鮮半島の情勢に変化が起きているように思う。いつものように門外漢の経済学者が、そうした変化について雑感を述べる。

 北朝鮮は以前にも、うわべだけ歩み寄りのスタンスを示したことはあった。しかし、その都度適当な理屈をつけて歩み寄りを覆してきた。今まで期待が裏切られてきた経緯から考えると、どうしてもその不安を払拭することはできない。

 何故、今になって北朝鮮がわが国に対する姿勢を変えたのだろか。おそらく、彼ら側にそうせざるを得ない、あるいはそうした方が得だと考える事情があるのだろう。その疑問を解くカギは、どうも中国との関係にありそうな気がする。

 足もとの北朝鮮の農業生産は、不純な天候などもあり、落ち込んでいると言われている。ただ、農産物の不作などは今までにもあったことで、今回に限ったことではない。また、わが国をはじめ世界からの制裁措置も今に始まったことではない。

 それよりも不自然に見えるのは、金正恩がリーダーの座についてから、まだ一度も北京を訪れていないことだ。その理由の1つに、中国とのパイプ役を担っていたと見られる側近、張成沢の粛清があったとの見方がある。

 今回の北朝鮮のスタンスの背景には、北朝鮮・中国間の関係のこじれがあると考えると、疑問の多くが解消されるような気がする。

 朝鮮半島は、世界の安全保障に関してとても重要な位置にある。米国とロシア、そして近年台頭が目覚ましい中国のパワーがぶつかるポイントなのである。そこに一種の緩衝帯が存在する。