ホームセンター(HC)は、小売業の中でもとくに万引被害が多い業界の一つだ。

 NPO法人全国万引犯罪防止機構(東京都/河上和雄理事長)はこのほど、平成20年度の「全国小売業万引被害実態調査」を発表した。それによれば「HC・カー用品」業態の1企業当たりの平均被害件数は399件で、スーパーマーケット(SM)の421件に次いで2番目に万引被害の多い業態となった。

 今回の調査は毎年、全国万引犯罪防止機構が実施しているもので、今年3月にセルフ販売小売企業924社を対象に調査を行い、324社から得た回答を元に集計した。この結果、平成20年度の万引犯罪件数は5万4233件で、売上高対不明ロス率は0.52%、推定ロス高は1325億円にも上ることが明らかになった。

40%のホームセンター企業で万引き被害額が増加

 小売業全体では、年間の万引被害件数は、205件で前年度の514件を大きく下回っているものの、万引被害金額については「増えた」と感じている小売業は多い。「大変増えた」と回答したのは全体の8.3%で前年度の3.9%を4.4ポイント上回った。また「HC・カー用品」業態では「やや増えた」と回答した企業が全体の40.0%あった。小売業全体でも万引による被害金額は増加傾向にあるが、HCにおいても被害が増えている企業が多い状況が浮かび上がった。

 確保した万引犯を職業別に見ると、最も多いのが29.0%の「無職」だが、「主婦」20.4%、「社会人」14.2%と続いた。不況により職を失った人が万引犯になるケースが多いが、それでも「無職」の割合は減少傾向にある。反面、増加傾向にあるのが「社会人」と「主婦」。「百貨店」「HC・カー用品」「SM」においては「無職」の比率が高く、「婦人服・子ども服」「生活協同組合」「コンビニ・ミニSM」などでは「主婦」の比率が高くなっている。

 万引被害の多い商品の特徴は「高額品」「商品形状がコンパクト」または「換金性が高い」という比較的に単価の高い商品と「低価格の日常生活品」に分けられる。高額商品では、高級化粧品、バッグ・財布の小物、アクセサリーなど。「換金性」では電動工具が上がっている。

 最近では、インターネット・オークションやリサイクルショップなど、換金が容易にできる仕組みも世の中に広まっており、換金目的の万引も増加傾向にある。

 万引の原因として多く挙げられたのは「万引に対する犯罪意識の欠落」が74.1%で最も多く、「長引く経済不況」も多くが原因として挙げた。また「HC・カー用品」業態では「店舗の大型化」が最も多い原因として挙がった。

全国万引犯罪防止機構でも「HCは、ゴンドラが高く、死角ができやすい。このため万引しやすい」と指摘する。また店舗が大型化すれば、販売員1人当たりの守備範囲も増え、注意も散漫になりやすい。この上HCでは、万引犯にとっては換金性が高いとされる電動工具を扱っていることも万引被害額の増加に影響しているようだ。

有効な防止策は「来店客への声かけ」

 ゴンドラを低くして、店内の死角を減らすなどの対策は効果的で、対策として講じられるケースも多いが、最も多くの小売業が実施しているのが「従業員がお客さまに声をかける」で88.9%の小売業で実施されている。全国万引犯罪防止機構でも「『いらっしゃいませ』と店員が相手の目を見て声をかけると、万引犯も『見られている』と感じて万引しにくくなる」という。小売業の基本でもある接客が意外にも、最も有効な万引防止策かもしれない。

 ただ、リサイクルショップやインターネット・オークションのように換金できる仕組みが増えたことで万引がビジネス化する傾向も見える。こうした新しい状況が万引のプロ集団化を促す可能性もある。不況が長引く昨今、万引も複雑化すると同時に手口も巧妙になりそうだ。


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