11月初め、グーグルが創業3年目の新興企業AdMob(アドモブ)の買収を発表したことで、モバイル広告への注目がやおら高まっている。
アドモブは、iPhone(アイフォン)を中心とするスマートフォンに広告を配信する技術を開発し、現在世界最大のモバイル広告プラットフォームを擁している。グーグルはこれまでもモバイル向けの検索広告をテキスト形式で配信してきたが、アドモブの強みはリッチなディスプレイ広告。通常のウェブ広告で言うならばバナー広告のような表示を可能にする技術だ。グーグルはアドモブを買収したことで、検索広告技術の強みとディスプレイ広告表示の両方の武器を手にする。来るべきモバイル広告隆盛に備えた一手と言えよう。
2006年にシリコンバレーで設立されたアドモブは、セコイア・キャピタルやアクセル・パートナーズ、DFJ(ドレイパー・フィッシャー・ジャーベットソン)などシリコンバレーの名門ベンチャー・キャピタルからこれまで4700万ドルを超える資金を受けてきた。すでにフォードやP&Gなどの大企業をクライアントに持ち、この不況下で利益まで上げてきた。社員数は100人以上で、もはや新興企業と呼ぶには似つかわしくない規模だ。
アドモブの急成長を支えたのは、何と言ってもアイフォンの人気だ。それも、アイフォンのためにディベロッパーが開発したアイフォン・アップである。アドモブの創設者オマール・ハヌイは、ディベロッパーたちが広告収入を得られれば、自作のアプリケーションをユーザーに無料で提供できるようになるとにらみ、アプリケーションに統合するプログラムを開発した。
アイフォンのアップストアでは、現在10万をこえるアプリケーションがラインアップされており、広告収入の魅力に惹かれたディベロッパーたちがこぞってアドモブの船に乗り込み、広告基盤を一気に広げた。現在1万5000を超えるモバイル・サイトやアプリケーションがアドモブの広告技術を統合している。さらにアップルの値下げ敢行でアイフォンが99ドルの超格安となり、ユーザー基盤が増えたことも追い風になった。