米国利下げの背景に何があったのか…。

 FRBが利下げに踏み切った。下げ幅が予想を上回ったことで、米国、日本などの株式市場には安心感が広がっている。しかし、急騰する株式市場を尻目に、麻痺状態が続き綱渡りを強いられている市場がある。サブプライムローン問題で深い傷を負ったABCP市場だ。混乱の収束は容易ではない。伝家の宝刀を抜かざるをえなくなった金融当局にとっても、その道は険しい。

「これは将来に禍根を残す大きな政策ミスだ」

 元FRB(米連邦準備制度理事会)幹部は苦々しげに語る。だが、米国の株式市場は諸手を挙げて歓迎した。

 大歓迎は日本でも同じだった。普段はおおかたのニュースを「織り込みずみ」と受け流すヘッジファンド幹部も言い切った。「久方ぶりのグッドニュースだ。これで相場の流れが変わる」――。

 FRBは2007年9月18日、政策金利であるFF(フェデラルファンド)金利の誘導目標を0.5%引き下げ、4.75%とした。

 利下げ幅を0.25%としていた市場予想を裏切り、サプライズを生んだこのニュースは、世界の株式市場を駆け巡って、安心感をもたらした。

 米国のダウ平均株価は、前日比335.97ドル高と、約5年ぶりの上げ幅を記録。日経平均株価は579.74円高の1万6381.54円と5年半ぶりの大幅上昇である。インドのSENSEX指数も1年3ヵ月ぶりの上げ幅で最高値を更新。香港市場も急反発で最高値を塗り替えた。

 このサプライズ利下げに対して、冒頭の元FRB幹部のように苦言を呈する向きも一部にはある。彼らの頭にあるのはインフレ懸念だ。