意外なニーズで火がつく可能性あり?「3Dテレビ」は本当に普及するのか
パナソニックが今春市場投入を予定している3Dテレビ「FULL HD 3D」の情報がチェックできるページ。英語だが、CES会場のデモのレポートなどもある。

 2010年1月7日~10日、米国最大の家電ショー「2010 International CES」(Consumer Electronics Show)が開催された。CES2010は1967年より開催されており、過去にビデオカメラ、CDプレイヤー、プラズマテレビなど、今や家庭でおなじみとなっている家電が世界で初めてお披露目されてきた、由緒のある家電ショーだ。

 先の「CES2010」で、一番の話題をさらったのが「3Dテレビ」である。

 「3Dテレビ」とは、専用メガネで見ると、画面に映っている画像が飛び出したり、風景に奥行きがあるように見えたりする次世代テレビ。パナソニック、ソニーをはじめ、シャープなどが相次いで、市販製品により近いサイズでのデモンストレーションを行なった。

 パナソニックは、50~60型のプラズマ3D対応テレビを、北米で3月から市場投入すると発表。北米に続き、日本でも順次発売の予定だ。

 さらにソニーも、今夏以降、40~60型の液晶3Dテレビを9種そろえ、シリーズで市場投入することを発表した。気になる価格は未定だが、市場予測では、どうやら「一般家庭でもなんとか手に届く価格」とか。

 また、東芝やシャープも、今年後半までに3D対応テレビの発売を目指しているほか、韓国のサムスン電子やLG電子も年内参入を計画中。昨年あたりから、「2010年は3D元年」と言われてきたが、いよいよ3Dテレビが家庭に本格的に上陸する日が間近に迫ってきたようだ。

 エレクトロニクス業界が、ここまで3Dに熱くなる最大の背景には、従来の大型・薄型テレビの値崩れが続いている状況がある。新たな市場開拓の目玉として、「これに賭けるしかない」というところだろうか。

 さて、この3Dテレビ、各社の期待通りにちゃんと家庭に普及するのだろうか?

 映画の世界では、3DのSF映画『アバター』が人気を呼んでいることでもわかるように、3D映像に関する興味関心はある程度熟していると思われる。

 ただし、今までの映画と異なり、「何かをしながらでも見られる家庭のテレビを、わざわざメガネをかけて見るのは煩わしい」と思う人が、筆者も含め少なからずいるはずである。こうした視聴環境の根本的な変化を乗り越えて、3Dテレビが普及するための鍵とは――。

 単純に考えると、その鍵はやはり「そうまでしても見たい(あるいは体験したい)」と思うコンテンツが提供されるかどうかだろう。

 そのあたりは、各社にとって「言わずもがな」。ちゃんと手を打っているようだ。ソニーは、米テレビ局やカナダの映画館運営会社と合弁で3D番組専門の放送局を設立し、11年から米国内での放送開始を予定である。

 パナソニックも、米国ではDIRECTVと提携し、自社3D対応テレビ向けに、6月にも3D映像の配信を発表するなど、ハードの進化と同時にソフト充実への動きを加速させている。このへんが、3Dテレビ商戦の大きな特徴と言えるだろう。

 こうして見てくると、3Dテレビ市場を先導するのは米国になりそうだが、日本市場ならではの普及のための方策や道筋は、ないのだろうか? 

 個人的に思いつくのは、やはり「ゲーム」。小型3Dテレビは、どうやらゲームに適しているらしい。もしかすると、ゲームの方から火がつくかもしれない。

(梅村千恵)