大規模な財政出動が奏功し、数字で見る限り、中国の景気回復基調は鮮明となった。だが、問題は、その中身。公共投資に代わる新たな成長エンジンへの切り替えが進まなければ、早晩息切れすることになりそうだ。写真は、大型の建設プロジェクトが今も続く上海の様子。Photo (c) AP Images

 中国語では「空港」と「養鶏場」が同じ発音だが、「今作られている空港は、数年後には養鶏場になる」という皮肉なジョークが交わされているという。

 7月半ばから8月初旬にかけて、中国の第2四半期主要経済指標が発表された。実質経済成長率(前年比)7.9%、製造業物流担当者購買指数(PMI:7月)53.3など、数字で見る限り、景気回復基調は鮮明となった。

 だが国内外で、その“中身”に対する疑念の声が高まっている。「実体経済の改善に基づく数値の上昇かというと、かなり疑問。現地の政府・企業関係者でも、楽観的な見方をしている者はいない」(JETRO海外調査部中国北アジア課の島田英樹氏)。

 結論からいえば、現在の中国の景気回復は、政府による公共投資関連に偏ったものであり、“本物”とは決して言えない。加えて、副作用としての株式・不動産市場のバブルが“見かけ”の好調を演出している。「金のいらないところに金が入っているという面でいえば、状況はむしろ悪化している」(島田氏)。

 目下の“政策論争の焦点”は、銀行貸出の急増である。

 昨年10月末、中国人民銀行および金融当局は銀行融資の総量規制を解除、各行への窓口指導を通じて、金融緩和を強力に推し進めた。結果1~3月の新規貸出額は前年同期比347%、3月単月では668%に達した。“行き過ぎ”を悟った政府と金融当局の指導により、4・5月の貸出は急減速したが、6月には前年同月比460%と再び拡大。「大手銀行は検査が入ったため、皆おとなしくなったが、隙間を突いてそれまで出番のなかった中小銀行が貸出を増やした」(肖敏捷・大和総研投資戦略部シニアエコノミスト)結果である。

 すでに指摘されているとおり、融資された資金のかなりの部分が株式や不動産への投資・投機に回った。上海総合指数は8月4日時点で年初来85%の上昇、1~6月の全国住宅販売面積は前年同期比33%増、同金額は57%増、北京においては各141%増、136%増。「ファンダメンタルに対してあまりにも急な上昇で、完全にバブル」(柯隆・富士通総研経済研究所主席研究員)の状態だ。「株も不動産も回復スピードが速すぎるのは確かだが、水準からいえばまだバブルというほどではない」(肖シニアエコノミスト)との見方もあるが、少なくともリスクが高まっているのは間違いない。