【最終回】 2009年08月26日
グーグルが提示した
デジタル社会の「穏当な近未来図」
コミックは雑誌か書籍か
グーグル和解問題は今回で一区切りとします。1度延長された離脱期限(9月4日)が迫っていますが、特に目立った動きはないようです。これまでに1部の団体に離脱の動きがありましたが,日本の大多数の権利者は離脱を選択せず、和解の枠組みに残ることにしたようです。
少々話が横道へそれますが、これまでの連載の中で触れていなかったものとして、コミックの取り扱いの問題がありますので、これについて簡単にまとめておきたいと思います。
今回のグーグル問題においては、デジタル化のターゲットは書籍とされ、雑誌などの定期刊行物はグーグルによるスキャンの範囲外とされていました。アメリカにおいては、コミックはもっぱら定期刊行物として出版されるため、コミック・漫画はスキャンされず問題とはならないと、当初は考えられていたのです。ところがスキャンの対象となるリストには、手塚治虫作品を始めとして、いくつものコミック作品が挙げられていました。
日本においてもコミック単行本は、もっぱら雑誌流通によって頒布されています。しかしその外見は文庫本や新書本と変わらないし、四六版のハードカバーで出版されている作品もあります。外見で区別がつかないために文字系の本と同様にスキャン対象とされたのだと考えられますが、日本の大手出版社にとってコミック出版の比重が大きいことと、すでに電子書籍市場においても電子コミック市場が数約億円の規模で立ち上がっていることから、この問題をどう扱うかが議論されてきました。
5月に原告側弁護団が来日した際に、書協における会合でこの問題についてかなりの時間を質疑応答に費やしたが、判明したことは日本におけるコミックの出版形態についてアメリカ側に正確な理解がなく、定期刊行物を除外すれば足りるという認識だったということでした。
一方ですでにスキャン済みの作品があることを考えると、日本の権利者は、コミック作品を和解の枠外と主張するのか、それとも和解の枠内で文字系の本と同じように態度決定をするのか、という決断をせざるを得ません。漫画家の団体である日本漫画家協会は和解の無効を主張しているようですし、出版社からも、異議申立てなどの動きが今後あるかもしれません。
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著者プロフィール
- 村瀬拓男
(弁護士)
1985年東京大学工学部卒。同年、新潮社へ入社。雑誌編集者から映像関連、電子メディア関連など幅広く経験をもつ。2005年同社を退社。06年より弁護士として独立。新潮社の法務業務を担当する傍ら、著作権関連問題に詳しい弁護士として知られる。
この連載について
グーグルの書籍データベース化をめぐる著作権訴訟問題は、当事国の米に留まらず日本にも波及している。本連載では、このグーグル和解の本質と、デジタル化がもたらす活字ビジネスの変容を描いていく。
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