【第6回】 2009年07月01日
グーグル和解問題を国会図書館の動きから考える(1)
改定著作権法は、デジタル時代の
著作権の考え方を反映しているか
6月12日、改正著作権法が成立しました。改正の趣旨は「デジタルコンテンツの流通促進のため、インターネット等を利用して著作物等を利用する際の著作権法上の課題の解決を図る」こととされています。法改正に至った立法事実は大きく3つ、(1)インターネットを利用した事業が諸外国に比較しても遅れている、(2)違法配信からの複製が正規事業を上回る規模となっている、(3)障害者の情報格差が拡大している。(1)を平たく言えば、「著作権法が(利用者に)厳しいから、日本でグーグルが生まれなかった」ということでしょう。
改正著作権法では「インターネットで情報検索サービスを実施するための複製」が適法化されました。しかし、はたしてこれが以前から適法性に問題がないとしたら、日本でグーグルが誕生したと言えるか、はなはだ疑問です。たしかに検索用のウェブデータ収集や、キャッシュとしてのデータの蓄積は、形式的には複製行為ですから著作権法違反を問われるおそれはあったでしょう。しかし、コンピュータは本質的にデータをコピーし蓄積して処理するものである以上、コンピュータで著作物を扱う限り必然的に複製行為がついてまわります。著作権法において複製権が著作者の権利とされているのは、著作物が複製されて利用されることによるのですが、コンピュータ処理上の「複製」ははたして「利用」なのでしょうか。
著作物は「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義されますが、それならば「思想又は感情を表現として受けとる」局面において保護されれば足りるはずです。実際にはそこをピンポイントで捕捉することが困難なため、「複製」とか「送信可能化」とかいう捕捉しやすいポイントで規定することになりますが、これはあくまでも法技術の問題です。今回の改正は、著作権制度の趣旨に基づいて考えれば当然適法と考えるべきであったところであり、技術面の理由で埋めていなかった穴を埋めたにすぎないと思います。
今回のグーグル和解問題も、グーグルが無許可で本をスキャン(複製)したことや、原告側がそれに対する対抗手段として集団訴訟を選択したことなどは、決して本質的な問題ではありません。複製権をどうコントロールすべきかは法技術の問題なのであって、著作権制度の本質的な問題ではないのと同様です。和解から離脱して自分たちの権利は自分たちで争うべきかどうか、和解のベルヌ条約上の疑義を指摘して、国レベルの交渉によって活路を開くべきかどうか、ということも「手段」として検討に値するかもしれませんが、争うことによってどのような状況を獲得すべきか、インターネットの存在を前提とした著作物流通のあり方をどのようにしたいのか、という「目的」がはっきりしない限り「手段」の議論は不毛なのです。
Special Topics
バックナンバー
新着トピックス
- 野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む
- 「円高こそデフレの原因」説の怪しさ ──今こそ必要なデフレの経済学(6)
- 日本を元気にする企業の条件
- ホンダ、ヤマハ発、味の素、住友化学… 日本企業にもあるBOP市場開拓のネタ
- 『週刊ダイヤモンド』特別レポート
- 市民による市長リコールもまだできない 阿久根市政“大混乱”の責任は誰にある?
- News&Analysis
- 苦境の地方空港に追い討ちも? 火種くすぶる「ハブ空港」議論の真実
- 岸博幸のクリエイティブ国富論
- 日本のためにならない「FREE」礼賛論を疑え!
- 追跡!AtoZ ~いま一番知りたいテーマを追う!超リアルドキュメント
- 大ヒット商品が続々「特許切れ」へ。 2010年以降、もう「新薬」は生まれない!?
- チャンスを逃さない! 今どき「住活」事情 By SUUMO(スーモ)
- エコポイントがなくても人気は絶大? 想像以上に盛り上がる「エコ住宅」ブーム
- 働き盛りのビジネスマンを襲う 本当に怖い病気
- 手足のひび割れと関節痛が同時に!? 骨の変形をも引き起こす皮膚病の正体
ダイヤモンドオンラインplus 知っておきたい価値ある情報
最新の連載一覧
経済・時事
経営・戦略
スキル・キャリア
Diamond Premium 最新記事 無料会員登録すると全文が読めます
- 公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略
- “不況に強い”にも関わらず売上急減!? 医薬品業界を襲う「2010年問題」とIFRS
- 金融市場異論百出
- 超インフレ国はジンバブエのみ 世界が学んだ「最低限の規律」
- 週刊ダイヤモンド 企業特集
- ユニー 前村哲路社長インタビュー 「現場の自由裁量権を広げ 個店経営のウエートを高める」
- 『社会貢献』を買う人たち
- キレイになって、途上国を支援! 女性の飽くなき「美への探求」が生んだ、一石二鳥のビジネスモデル
- 山崎元のマネー経済の歩き方
- 対等合併の呪

- 岡野工業・岡野代表エッセイ
- “神の手をもつ男”岡野雅行氏が日本の物づくりに「常識を捨て去れ」と喝!

- DOL編集部のツイッターを開始
- 最新記事の話題から編集部の日常まで、24時間つぶやきます。フォローよろしくお願いします。
Business information
著者プロフィール
- 村瀬拓男
(弁護士)
1985年東京大学工学部卒。同年、新潮社へ入社。雑誌編集者から映像関連、電子メディア関連など幅広く経験をもつ。2005年同社を退社。06年より弁護士として独立。新潮社の法務業務を担当する傍ら、著作権関連問題に詳しい弁護士として知られる。
この連載について
グーグルの書籍データベース化をめぐる著作権訴訟問題は、当事国の米に留まらず日本にも波及している。本連載では、このグーグル和解の本質と、デジタル化がもたらす活字ビジネスの変容を描いていく。
アクセスランキング
- 2位
- 週刊・上杉隆
- 元秘書として鳩山邦夫氏に苦言を呈す 信念の見えない離党に意味はあるのか?
- 3位
- News&Analysis
- 日本が望みを託す宇宙開発の切り札! 「宇宙エレベーター」の知られざるシナリオ
- 4位
- China Report 中国は今
- 優秀な中国人学生を採用できなくなった日本企業
- 5位
- 評価が上がる!上司を味方にする技術
- 上司に好かれる話の聴き方、嫌われない質問の方法
Recommend 話題の記事
- China Report 中国は今
- 優秀な中国人学生を採用できなくなった日本企業
- 田中秀征 政権ウォッチ
- 鳩山首相「発言のブレ」正当化に疑問を呈す
- News&Analysis
- 日本が望みを託す宇宙開発の切り札! 「宇宙エレベーター」の知られざるシナリオ
- 山崎元のマルチスコープ
- 官民一体の海外ビジネス受注期待を怪しむ
- ミドルマネジャーのための「不機嫌な職場」改革講座
- この閉塞感はどうにもならないのか? 組織の成果を最大化する人事制度とは
- SPORTS セカンド・オピニオン
- 大リーグ球団にとっての、日本人選手の価値を考える
- 政局LIVEアナリティクス 上久保誠人
- 参院選がどう転んでも、 政界の「世代交代」加速は止められない

- 【PrimeTime】トップインタビュー
- 「サービス力は人財力と組織力の掛け算」~百瀬次生・日立電子サービス社長

- 【THEProject】プロダクトとサービス最前線
- 現実味帯びる「IFRS」。最新会計基準対応処理システムを低コストで提供
雑誌定期購読のご案内
特大号・特別定価号を含め、1年間(50冊)市価概算34,500円が、定期購読サービスをご利用いただくと25,000円(送料込み)。9,500円、約13冊分お得です。さらに3年購読なら最大49%OFF。
1冊2,000円が、通常3年購読で1,333円(送料込み)。割引率約33%、およそ12冊分もお得です。
特集によっては、品切れも発生します。定期購読なら買い逃しがありません。
年間12冊を定期購読すると、市販価格8,400円が7,150円(税・送料込み)でお得です。お近くに書店がない場合、または売り切れ等による買い逃しがなく、発売日にお手元へ送料無料でお届けします。
※別冊・臨時増刊号は含みません。
偶数月の1日発売(隔月刊)。1年購読(6冊)すると、市販価格 5,880円→4,700円(税・送料込)で、20%の割引!
※別冊・臨時増刊号は含みません。
お知らせ・ご案内
- 会員専用ページ開始のお知らせ
- 7月より一部の記事で、無料会員登録した方だけが全文を読める形に変わりました。詳細はこちらをご覧ください。




