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「黒船」グーグルが日本に迫るデジタル開国

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グーグル和解問題を国会図書館の動きから考える(1)

改定著作権法は、デジタル時代の
著作権の考え方を反映しているか

 6月12日、改正著作権法が成立しました。改正の趣旨は「デジタルコンテンツの流通促進のため、インターネット等を利用して著作物等を利用する際の著作権法上の課題の解決を図る」こととされています。法改正に至った立法事実は大きく3つ、(1)インターネットを利用した事業が諸外国に比較しても遅れている、(2)違法配信からの複製が正規事業を上回る規模となっている、(3)障害者の情報格差が拡大している。(1)を平たく言えば、「著作権法が(利用者に)厳しいから、日本でグーグルが生まれなかった」ということでしょう。

 改正著作権法では「インターネットで情報検索サービスを実施するための複製」が適法化されました。しかし、はたしてこれが以前から適法性に問題がないとしたら、日本でグーグルが誕生したと言えるか、はなはだ疑問です。たしかに検索用のウェブデータ収集や、キャッシュとしてのデータの蓄積は、形式的には複製行為ですから著作権法違反を問われるおそれはあったでしょう。しかし、コンピュータは本質的にデータをコピーし蓄積して処理するものである以上、コンピュータで著作物を扱う限り必然的に複製行為がついてまわります。著作権法において複製権が著作者の権利とされているのは、著作物が複製されて利用されることによるのですが、コンピュータ処理上の「複製」ははたして「利用」なのでしょうか。

  著作物は「思想又は感情を創作的に表現したもの」と定義されますが、それならば「思想又は感情を表現として受けとる」局面において保護されれば足りるはずです。実際にはそこをピンポイントで捕捉することが困難なため、「複製」とか「送信可能化」とかいう捕捉しやすいポイントで規定することになりますが、これはあくまでも法技術の問題です。今回の改正は、著作権制度の趣旨に基づいて考えれば当然適法と考えるべきであったところであり、技術面の理由で埋めていなかった穴を埋めたにすぎないと思います。

 今回のグーグル和解問題も、グーグルが無許可で本をスキャン(複製)したことや、原告側がそれに対する対抗手段として集団訴訟を選択したことなどは、決して本質的な問題ではありません。複製権をどうコントロールすべきかは法技術の問題なのであって、著作権制度の本質的な問題ではないのと同様です。和解から離脱して自分たちの権利は自分たちで争うべきかどうか、和解のベルヌ条約上の疑義を指摘して、国レベルの交渉によって活路を開くべきかどうか、ということも「手段」として検討に値するかもしれませんが、争うことによってどのような状況を獲得すべきか、インターネットの存在を前提とした著作物流通のあり方をどのようにしたいのか、という「目的」がはっきりしない限り「手段」の議論は不毛なのです。

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著者プロフィール

村瀬拓男
(弁護士)

1985年東京大学工学部卒。同年、新潮社へ入社。雑誌編集者から映像関連、電子メディア関連など幅広く経験をもつ。2005年同社を退社。06年より弁護士として独立。新潮社の法務業務を担当する傍ら、著作権関連問題に詳しい弁護士として知られる。

この連載について

グーグルの書籍データベース化をめぐる著作権訴訟問題は、当事国の米に留まらず日本にも波及している。本連載では、このグーグル和解の本質と、デジタル化がもたらす活字ビジネスの変容を描いていく。

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