パインアメ人気の裏側で老舗メーカーが直面したシステムの「限界」

誰もが一度は口にしたことがあるであろう「パインアメ」。あの独特の穴開きフォルムと、程よい甘酸っぱさが印象的なキャンディーを生み出すパインは、大阪に本社を構えるキャンディーメーカーだ。パインアメをはじめ、オレンジアメ、あわだま、どんぐりガムなど、いずれも30年以上の歴史を誇るロングセラー商品を擁し、2026年現在で76期を迎える屈指の老舗企業である。

「パインアメ」人気沸騰の裏でシステムの限界に直面した老舗メーカーに伴走し、悩みを解決した業界を熟知する心強いパートナー右から、パインの看板商品「パインアメ」と姉妹品の「オレンジアメ」。いずれもロングセラー商品だ

近年の業績は極めて好調だ。20年から21年にかけてはコロナ禍の影響で売り上げが落ち込んだものの、23年に阪神タイガースが日本一に輝いたことをきっかけに風向きが一変した。当時の岡田彰布監督が試合中にパインアメを口にしている映像や情報が広まり、ブランドへの注目度が急上昇。これまでパインアメを知らなかった層にもファンが広がり、23年は過去最高の売り上げを記録した。その後も勢いは止まらず、前年を超える売り上げが続き、好調を維持している。

しかし、そんな目覚ましい成長期を迎え、大幅増産に対応できる新工場(滋賀県草津市)が稼働するなど体制が整う一方で、同社の骨格たる基幹システムは30年近く前に構築された専用システムのままで、重大な限界を迎えつつあった。

同社管理部業務課課長の今井豊氏は、当時直面していた課題をこう振り返る。

「旧システムは法改正のたびに高額な改修費用が発生し、近年は原因不明のエラーや数字の不一致といった不具合が頻発するようになっていました。25年秋の保守期限を控え、このまま契約を更新するのか、新システムに刷新するのかの判断を迫られていたのです」

「パインアメ」人気沸騰の裏でシステムの限界に直面した老舗メーカーに伴走し、悩みを解決した業界を熟知する心強いパートナーパイン
管理部 業務課 課長
今井 豊

そこで同社では、23年春に部門横断の新システム委員会を立ち上げ、各部署の代表者が参加し、現場の意見を持ち寄りながら議論を重ねていった。ただ、社内には専任の情報システム担当者がいなかったこともあり、委員会は複数のシステム会社に相談しながら進められた。そこでアイルにも声が掛かった。

このとき、話を聞いたアイルのシステムソリューション営業の髙橋嵩也氏は、当時の印象をこう語る。

「長年にわたって運用されてきたオーダーメードのシステムでしたので、現場にも溶け込んでいる印象でした。一方で、システムの開発担当者からの引き継ぎや運用がうまく回っておらず、ブラックボックス化が進んでいることへの不安も感じられました」

「パインアメ」人気沸騰の裏でシステムの限界に直面した老舗メーカーに伴走し、悩みを解決した業界を熟知する心強いパートナーアイル
システムソリューション営業
髙橋嵩也

髙橋氏は、パインが抱えるさまざまな悩みに寄り添い、親身に相談に乗った。「当社は食品業界での導入実績が豊富なので、他社さまではこんなふうに使っていますよ、といったお話をさせていただきました」。

そうした積み重ねによって、アイルは頼もしいパートナーとして存在感を増していく。アイルでは食品やアパレルなど、業界ごとに営業とシステムエンジニアの専門チームを編成している。パインの担当チームも食品業界を専門とするメンバーがそろう。食品業界特有の業務内容への理解も深かった。

「このときはまだ並行して他社にも相談していましたし、改修で済ませるのか、刷新するのかも決まっていませんでした。ただ、アイルさんは質問への回答が早く、取引先ごとに異なる価格設定や、複数の卸が介在する商流(帳合取引)の話がすぐ通じる。検討を進めていくうちに、『この会社なら長くお付き合いができそうだ』と思うようになりました」(今井氏)

委員会や社内での検討を経て、パインはシステムの全面刷新を決断、3社によるコンペを実施することとなった。委員会などを通してパインの課題を熟知していたアイルは、早い段階から的確かつ迅速な提案を行った。こうした迅速な対応と食品業界に対する専門性が決め手となり、23年11月に両社は正式に契約、25年9月の稼働を目指すプロジェクトが始まった。

50回以上に及ぶ打ち合わせで現場の声を丁寧に拾う

プロジェクトの基本方針は明確だった。パッケージをベースにしながら、カスタマイズは本当に必要な部分だけに絞る、というものだ。

背景にあったのが、導入予定の「アラジンオフィス for foods」がすでに食品業界に特化したパッケージであることだ。例えば、食品が小売店の店頭に並ぶまでには複数の卸が入るのが一般的だ。すると、工場からの納品先は中間卸の倉庫だったり、小売店への直送だったりとさまざまで、1件の出荷に対して「複数の取引先情報」が必要になる。さらに、同じ商品でも取引先やタイミングによって価格が変動する。こうした複雑な処理も標準機能でカバーできる。

「将来にわたって使いやすく、サポートも受けやすい状態を維持するため、本当に必要な部分だけを作り込むことを意識しました。標準機能を最大限に活用すれば、法改正や制度変更にも対応しやすくなり、将来的な保守負担も抑えられます」と語るのは、アイルのシステムソリューションサポートの吉田怜史氏だ。

「パインアメ」人気沸騰の裏でシステムの限界に直面した老舗メーカーに伴走し、悩みを解決した業界を熟知する心強いパートナーアイル
システムソリューションサポート
吉田怜史

とはいえ、何が何でもカスタマイズを減らすことを優先したわけではない。大切なのは、現場の使いやすさを損なうことなく、どこまで標準機能を活用できるか、その最適解を探ること。そこで、要件定義および設計のフェーズで、50回以上に及ぶ打ち合わせを重ね、現場で実際に使っていく人の声を丁寧に拾っていったという。

「これまで食品業界のお客さまの事例も数多く手掛けてきましたから、パッケージだけで業務がカバーできることには自信があります。しかし、それによって現場に不便を強いては意味がありません。実際の運用をイメージしながら、どこを標準機能で対応し、どこを作り込むべきかを一緒に検討していきました」(吉田氏)

こうした検討を重ねる中で、特に重視したのが出荷業務と生産管理の二つだった。工場からは毎日大量の商品が全国に向けて出荷されていくが、この出荷の流れが止まれば業務全体に影響が及ぶ。また、生産周りの効率化は生産性に直結するからだ。

出荷業務では、独自のピッキングリストを作成。工場から大量の商品が出荷される現場では、作業者が紙のピッキングリストを見ながら動くため、見やすさと使いやすさが業務効率に直接影響する。そこで、あえて紙での運用を残すことで現場の作業しやすさに配慮した。

生産管理では、工場からの強い要望を受けて生産計画の入力を自動化。従来はシステムに手入力していた30〜40件の工程をExcelデータから直接システムへ取り込む仕組みを構築した。生産実績の入力画面や動線も見直し、入力負荷の軽減とミス防止を図った。

現場で上がる着実な成果。手入力ゼロ、訂正処理時間は5分の1に

25年9月に本格稼働したアラジンオフィスは、導入から半年余りが経過した現在、着実に成果を上げている。

生産現場での変化は顕著だ。今井氏はその効果をこう語る。

「以前は1日分の工程データを手入力するだけで15分かかっていましたが、今はゼロになりました。それだけではなく、入力ミスによる工程データの抜けが一切なくなりました。以前は現場から『この製品の生産枠がない』と連絡が来て、慌てて作成することがありましたが、今はそれが完全になくなっています」

さらに、新商品のマスターデータ登録についても変化があった。以前は生産直前にマスターが未登録だと発覚して慌てる場面があったが、現在は2週間前に生産計画データを取り込む運用になったことで、未登録の場合はその時点でエラーが検出される。余裕を持った対応が可能になった。

「パインアメ」人気沸騰の裏でシステムの限界に直面した老舗メーカーに伴走し、悩みを解決した業界を熟知する心強いパートナー生産現場だけでなく事務作業においても成果が出始めた「アラジンオフィス」

本社の業務課などの事務担当者にとっても、業務効率は大きく改善された。

「訂正伝票を処理する際、以前は一度全部打ち出して間違いを修正して入れ直すという作業が必要でしたが、今は画面上で赤黒伝票として対応できます。5分かかっていた作業が1分以内で終わるようになりました」(今井氏)

出荷照会についても、以前は取引先から「荷物が届いていない」という問い合わせがあった際に伝票番号と商品名を一つ一つ確認しなければならなかったが、今は商品名を検索するだけで関連する出荷先が一覧で表示される。対応スピードが大幅に向上した。

社員の意識が大きく変化。現場が自走し始めた

定量的な成果だけではない。今井氏は社員の意識の変化を実感している。従来はただ使うだけだった社員たちが、今では自分なりにうまく使うにはどうしたらいいかを考えるようになった。現場が自走し始めたのだ。

「これまでは、現場からのシステムに関する困り事は私の部署に上がってきて、そこから業者と折衝し、見積もりをもらって……という段取りを踏んでいました。ところが今は、営業、生産、管理など各部門の担当者が、直接アイルのサポートセンターに問い合わせるのが当たり前になっています。相談しやすく、いつも有益なヒントをもらっています」

サポートセンターの手厚い対応に支えられ、担当者が自分で帳票や資料を作り込むアプローチが浸透しつつある。その際に活用されているのが「アラジンデザイナー」だ。

「お客さまご自身が必要な帳票や集計資料を作成できるツールです。いちいちシステムを改修することなく、自分が欲しい形にデータを加工できるので、現場主導でデータ活用を進められます。やり方はいろいろあるので、使い方は随時ご案内しています」と吉田氏。

例えば、「取引先ごとの実績の推移を、納品先別に金額や納入ケース数で把握する」といった細かなデータも自分で作成できるようになったことで、顧客へのアプローチに使える資料の精度と鮮度が上がった。新たなアクションのきっかけになるような分析も、以前よりはるかにスピーディーに行えるようになっている。

「分からないところはサポートセンターに問い合わせれば、遠隔で操作しながら教えてもらえます。そうしたやりとりを通じて、社員自身のシステム活用スキルも上がっていると感じています」(今井氏)

システム活用の幅をさらに広げ、経営戦略に生かしていく

とはいえ、稼働からまだ半年余り。現場主導の活用は始まったばかりだ。今井氏も「フルに使いこなせている状態にはまだ遠い」と率直に語る。アイルのシステムソリューション営業の広渡裕介氏によれば、新しいシステムが組織に浸透するには、年間を通した運用が必要なため、最低1年ほどかかるという。

「パインアメ」人気沸騰の裏でシステムの限界に直面した老舗メーカーに伴走し、悩みを解決した業界を熟知する心強いパートナーアイル
システムソリューション営業
広渡裕介

今後の活用として特に期待が高まっているのが、生産計画と原材料発注の連携だ。現在は2週間前に生産計画データを取り込んでいるが、この情報を基に原材料の所要量を計算し、在庫を加味して足りない原材料を洗い出し、仕入れ先へ発注するという機能が「アラジンオフィス」には搭載されている。広渡氏は「在庫切れを防ぎながら適切な量の原料を手配するような仕組みを、今後は構築していきたい」と語る。

今井氏が今後の課題として挙げるのは、社員全体へのシステム活用の浸透だ。

「システムは使ってこそ生きるものです。『こんな数字が見たい』『こんな使い方をしたい』という声がもっと出てきてほしいと思っています。今、若い世代ほど抵抗なくいろいろなチャレンジをしてくれているので、その点でも期待しています」

パインでは、現場から生まれたアイデアや活用事例を有効活用できるよう、社内で共有化を進めていく。

「パインアメ」人気沸騰の裏でシステムの限界に直面した老舗メーカーに伴走し、悩みを解決した業界を熟知する心強いパートナー2020年に稼働した滋賀県草津市の新工場。今後の成長を担う基幹工場だ

アイルとしても、パインの成長を、パートナーとしてシステムの側から支え続けていく方針だ。広渡氏はこう語る。

「私たちはシステムを作ることが目的ではなく、お客さまが本業に専念できる環境をつくることが仕事だと思っています。次の経営戦略を立てやすくなるようなデータ基盤の整備も含めて、パインさまのさらなる成長を助けるサポートをしていきたいと考えています」

76年の歴史と、老若男女に愛されるパインアメというブランド力を持つパイン。その確固たる強さを支える新たなデジタル基盤「アラジンオフィス」を得て、新たな成長ステージへと踏み出した同社の挑戦は、アイルという心強いパートナーの伴走とともに、これからも力強く続いていく。

●問い合わせ先
株式会社 アイル
<大阪本社>
〒530-0011 大阪府大阪市北区大深町3-1 グランフロント大阪タワーB 34階
<東京本社>
〒105-0011 東京都港区芝公園2-6-3 芝公園フロントタワー15~17・20階
TEL:0120-356-932
https://ill.co.jp/
アラジンオフィス:https://aladdin-office.com/