世界的な自動車不況において唯一好調なのが中国。1~6月の販売台数が、米国の480万台や日本の218万台を遥かに超え、過去最高の609万台を記録した。

 そんななか、中国での1~6月の乗用車販売が対前年比41%増と日系メーカーで最も波に乗っているのは日産自動車だ。この急成長の理由を、現地合弁会社、東風汽車有限公司(東風日産)の中村公泰総裁は「他社とは異なる車種構成や販売網の展開が功を奏した」と分析する。

 というのも中国市場の好況は2009年限定で始まった小型車減税策が牽引している。排気量1.6リツトル以下の乗用車購入時、10%の税が半減されるのだが、東風日産は取り扱う8車種中、6車種が対象となり、他社に比べ豊富だ。

 じつは日産の中国進出はトヨタ自動車やホンダに比べ遅かった。「出遅れたからこそスピーディに投資を集中する必要があった」(中村総裁)ため、小型の共通車台で多種展開し、販売店も一系列(他社は二系列)でセダンからSUVまでフルラインナップ化した経緯がある。

 また、販売網が中国内陸に多いというのも急成長の理由の1つ。国際化が進む北京や上海など沿岸の大都市は世界同時不況の影響をもろに受けたが、経済が発展途上の内陸はさほどではなく、むしろこれまで保有台数が少なかっただけに市場の伸びが顕著なのだ。

 そもそも今回の小型車減税は景気刺激策として、政府が小型車を主力生産する中国メーカーを支援する背景がある。日産はある意味“タナボタ”ともいえるが、この勢いを持続すべく増産を図り、販売店も拡大する。

 ただもちろん油断は禁物。値引き合戦や減税策終了後の反動にどう対応するか、エントリーカーとしての小型車を将来、上級車への乗り換えにどうつなげるか、課題は尽きない。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 柳澤里佳)

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