「あの話はつぶれたのではなかったのか……」

 みずほフィナンシャルグループの幹部がこう語るのは、ノンバンク最大手のオリックスとクレディセゾンとの経営統合話だ。

 8月初旬、一部報道で両社が来年秋をメドに経営統合を目指して交渉していたことが明らかになった。リースや不動産など法人ビジネス中心のオリックスと、個人向けカード中心のセゾンが一緒になれば、総資産規模11兆5000億円という国内最大規模のノンバンクが誕生する。

 事情に詳しい関係者によれば、この統合構想は「昨年末以降、トップ二人が主導するかたちで進められていた」という。オリックスの宮内義彦会長とセゾンの林野宏社長は、古くから「師弟関係」(関係者)の仲。業績低迷に加え、貸金業法改正などによる将来の不透明感を危惧したセゾンの林野社長側が話を持ちかけたという。

 しかし、トップ同士の話はついても、実務ベースに下りた段階で事態は紛糾する。オリックス側は、「シナジー効果がまったく期待できないばかりか、過払い請求などのお荷物もあって合併する意味がない」。対するセゾン側も「相手があまりに大きく、のみ込まれるだけだ」と反発する声が相次いだという。

 もう1つの懸念材料は、みずほの存在だ。傘下のみずほコーポレート銀行がセゾンの筆頭株主、みずほ銀行がカード事業における提携先。セゾンの経営の独立を維持するため上限こそ定めているものの、最近も出資比率を高めるなど、さらなる関係強化に動いていたからだ。

 関係者によれば、みずほ首脳は、セゾンの首脳から6月頃に統合話を耳打ちされていた模様。実務ベースの話し合いがまとまらない状況に安堵していた矢先の統合報道で衝撃が走った。みずほ幹部は、「セゾンとの関係は維持する」としているが、検討していた関係強化は中断が必至の情勢だ。
 
 実務ベースではしこりが残り、みずほからも冷ややかな視線が投げかけられる状況で話がまとまったとしても、統合効果が発揮できるのか不透明感が漂う。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 田島靖久)