「ニューシティ・レジデンス投資法人はなぜ、ローンスターがスポンサーになることに固執するのか。もっといい案が提出されている。はっきりいって往生際が悪い」(金融機関関係者)

 昨年10月に、リート(不動産投資信託)として初めて破綻したニューシティ・レジデンス投資法人。入札のうえ、再建スポンサーとして米ファンドのローンスターが選ばれていたのだが、その再生計画が債権者(主に銀行)から否決された。さらに新たなスポンサーも提案されており、事態は混沌としている。

 ローンスターの再生計画は60億円の増資を行なったうえで、借入金は約5年で全額弁済、投資口は3万5000円で公開買い付けするというもの。資金繰りによる突然死で傷は浅く、投資家にも弁済される珍しいケースといえる。

 ただ金融機関にとっては条件がよくない。全額弁済といっても実際には再上場を前提としたシナリオであり、「絵に描いた餅だ」(同)。しかも、借入金利は一律0.65%という低金利に引き下げられる。「ローンスターは事前に銀行への打診もしておらず準備不足」(同)であり、銀行団の不満が爆発した。

 一方、大口債権者から要請を受けて、再生計画の変更案を提出したのは大和ハウス工業とその系列にあるビ・ライフ投資法人。新しい計画案は、60億円の増資、借入金弁済率100%までは一緒。ただ借入金利は約2%(LIBOR+1%程度)とより高金利で、返済期間も短縮されるようだ。なにより現在も上場しているビ・ライフとの合併を予定しており、信用力が飛躍的に向上する。「投資家にとってもより有利な条件を提示している」(ビ・ライフ)という。

 合併というリートが経験したことがないスキームはリスク要因といえなくもないが、これだけよい条件提示があればローンスター案が否決されるのは当然だろう。

 ニューシティは再生計画案が否定されているにもかかわらず、「(大和ハウス案の採用は)法的に困難と考える」としている。今後、ローンスターに借入金利の引き上げなどを要請することで、銀行団に納得してもらう考えだ。

 だが新スポンサーの候補はじつは大和ハウスだけではない。当初のスポンサー入札では、米ファンドのオークツリーが二番札だった。こちらもビ・ライフ同様、系列のリートである日本賃貸住宅投資法人(旧リプラス・レジデンシャル投資法人)との合併を提案しており、金利条件もローンスター案よりいいという。

 通常、一番札がダメなら二番札に権利が回ってきてもおかしくない。当然だが、オークツリーも新スポンサーとして名乗りを上げる準備をしている。

 このままニューシティ、債権者、裁判所のあいだで話がまとまらなければ、最悪のケースは破産手続きへと移行する可能性もある。次回9月9日の債権者集会では結論が出るだろう。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 野口達也)

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