「ぜひ買いたい。できれば一号車を売ってほしい」
三菱自動車が来年夏にも販売を予定している電気自動車「iMiEV(アイミーブ)」に対し、“一号車指名”が相次いでいる。
複数の関係者によると、一号車を狙っているのは、まずは小泉純一郎元首相や小池百合子元環境大臣ら、地球環境問題に熱心な著名政治家。そのほか地方自治体、経済産業省や環境省など関係省庁の有力者などの名前も挙がる。三菱グループの首脳を通じてそれとなく申し込まれる事例もあり、三菱自動車も明確な回答をできず困惑している模様だ。
「あの大物政治家も……」といった“参戦情報”が飛び交うなか、「うち(の省庁)も欲しいのだが、すでに諦めている」と、ある関係省庁幹部は苦笑する。かくも争奪戦はすさまじい。
「アイミーブ」は、4人乗りで最高速度130キロメートル/時、一回の充電で160キロメートル走行できる。一般ユーザー向けの本格的な電気自動車では、日本初の量産車だ。
その記念すべき一号車を入手できれば、“エコ対策”に熱心な存在として、自らを強力にアピールできる。その宣伝効果は計り知れない。はたして、一号車を手にするのは誰か。
三菱自動車の益子修社長は「多くの引き合いが寄せられているのは事実であり、ありがたい。ただ、一号車の販売についてはまったくの未定」と言う。
そもそも、自動車業界においては、「一号車」という発想自体がじつは異例。「ディーラーに製品を卸す立場にある自動車メーカーが、大量生産品であるクルマを一号車として定義し、特定の顧客に納入することは一般論としてありえない」(業界関係者)からだ。
逆に、だからこそ「あえて三菱が納入式などを開いて先鞭をつけるのでは」という声が業界内にもあり、当面、電気自動車に関する話題は尽きそうもない。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 山本猛嗣)