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8人に1人が苦しんでいる!「うつ」にまつわる24の誤解 泉谷閑示

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“イライラ”は、「ウツ」が悪化している兆候なのか?

――「うつ」にまつわる誤解 その(8)

「怒り」と
どう付き合うか?

 これは「うつ」に限らないことですが、「怒り」の扱いが不適切なために、「怒り」の悪循環に陥っている方がよくあります。

 生み出された時には鮮度の良いもっともな「怒り」であったはずのものが、「怒り」を抑える習慣によって溜め込まれて腐敗し、それが溜まり溜まって圧力が高まり、ひょんなきっかけから不適切な場面で暴発してしまう。それを本人はいたく後悔しますが、それゆえ再び感情の蓋を強固に閉めてしまって、また「怒り」が充満しやすい状態を作ってしまう。これが、悪循環の構造なのです。

 アルコールで蓋が緩んだ時に暴発すると「酒乱(病的酩酊)」ということになりますし、親密な人間関係の場面でコントロールが緩んで暴発する場合には「DV(家庭内暴力)」の形をとるかもしれません。

 このような悪循環から抜けるためにも、「怒り」をただ蓋をしてごまかすのでなく、自分自身が「怒り」を受容しどう処理できるのかが大切なことになります。

 「怒り」を自分で受容することと、やみくもに外部にまき散らすことは違うことです。「怒り」の受容とは、「心」から出てくる「怒り」を、「頭」が共感し承認することなのであって、言動として外に表すかどうかは、まったく別の「社会性」の次元の問題なのです。

 そうは言っても、溜め込まれて充満している「怒り」を扱う場合には、「社会性」を吹っ飛ばして暴発する危険性もありますから、専門家のサポートも重要になってきます。

「心の吐き出しノート」
をつけてみる

 しかし、自分自身でできる工夫の一つとして、私はよく「心の吐き出しノート」というものを勧めることがあります。

 これは、決して誰にも見せてはならないノートです。しかし、そこには遠慮なくどんな罵詈雑言を書いてもよいことにするのです。書きたい時には、何ページでもよいからスッキリするまで書くようにします。もちろん、日記ではないので、書きたくない時に書く必要はありません。モヤモヤ・イライラ・ムシャクシャした時に、これを一人で誰にも邪魔されない状況で行なう習慣をつけるのです。

 「書く」という行為は、必ず「頭」の協力を必要とするものです。そのため、実際に感情を文字にして吐き出す作業に着手することは容易ではありません。しかし、徐々にこれができるようになってきますと、自ずと「心」と「頭」の間の蓋が開き、両者に協働的な関係が作られていくようになります。

 「怒り」を力づくで鎮圧するのではなく、このように自分で受容する方法で解決しますと、「頭」と「心」の関係に本質的な変化が生じます。つまり、「頭」が独裁的に「心=身体」をコントロールするという病的な構造が解消されるわけです。

 ともすれば悪者扱いされてしまう「怒り」も、見方を変え、扱い方を工夫することにより、ジェットエンジンのような力強さで見事な働きを示すものにもなり得るのです。

 次回は、休職している人が「一日も早く職場に戻りたい」と思うことについて、考えてみましょう。

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著者プロフィール

泉谷閑示
(精神科医)

1962年秋田県生まれ。東北大学医学部卒。東京医科歯科大学医学部付属病院医員、(財)神経研究所付属晴和病院医員、新宿サザンスクエアクリニック院長等を経て、現在、精神療法を専門とする泉谷クリニック院長。著書に『「普通がいい」という病』(講談社現代新書)と最新刊の『「私」を生きるための言葉』(研究社)がある。
「泉谷クリニック」ホームページ

この連載について

いまや8人に1人がかかっているといわれる現代病「うつ」。これだけ蔓延しているにもかかわらず、この病気に対する誤解はまだまだ多い。多数の患者と向き合ってきた精神科医が、その誤解を1つずつひも解いていく。

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