携帯電話業界で、ちょっとした異変が起きている。
「眠れる巨人」の感がすっかり定着していたNTTドコモが先月(2009年7月)の月間の純増数で、実に3年ぶりにトップの座を奪還する快挙を成し遂げたのだ。
ドコモと対照的なのが、KDDIの携帯部門auである。3年前にドコモをトップの座から引きずりおろした往時の勢いをすっかり失い、過去13ヵ月の間になんと11回も最下位の座に甘んじた。
ドコモは冷静で好調の理由を取材しても、「夏モデルの新商品やデータ通信の専用端末が好調だ」(広報部)と語るだけである。しかし、この説明は公式コメントに過ぎず、本当の成功の秘密を明かしていない。
実は、両社が明暗を分けた背景には、なかなか興味深い要因がある。あえて、ひと言で説明するのならば、それは「卸売りの活用」だ。
そもそも論で言えば、この卸売りの導入は、総務省の肝肝煎りで始まったものだ。不本意ながら、その活用に踏み切ったドコモは、結果的に大成功を収めた。一方、最後まで拒否姿勢を貫き、卸売りの導入を見送ってきたauは、案に反して凋落したのである。今回は、その皮肉なドラマをリポートしよう。
auから首位の座を奪われ
長い低迷が始まったドコモ
まず、携帯電話会社の各社別成績を紹介しておこう。
電気通信事業者協会(TCA)の8月7日の発表によると、新規契約から解約を差し引いた純増件数で、NTTドコモは14万3600件を獲得した。これにより、実に、2006年7月以来の36ヵ月ぶりという「トップの座」に返り咲いたのだ。
一方、26ヵ月にわたって首位の座にいたソフトバンクモバイルは13万7600件と2位に陥落した。その営業手法について、1人当たりの通信料収入(AURP)が伸びないとされ、借金だらけの脆弱な財務体質を抱えて、いつまで続くか疑問視する声が強かったが、ついに限界に達したのかもしれない。
そして、携帯電話4社の中で最も新参のイー・モバイルは7万6100件の3位と健闘をみせた。これら各社に対して、auはこれといった決め手を欠き、5万6600件と最下位に甘んじた。