
NTTドコモの屋台骨である通信事業が揺らいでいる。ダイヤモンド編集部の取材により、KDDIやソフトバンクといった競合他社との顧客争奪戦で、再び劣勢に立たされていることが分かった。特集『巨人復権 大NTTの野心』の#2では、内部データによって判明したドコモの苦境を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 村井令二)
新料金プラン導入の6月は顧客流出!
内部データで判明した「MNP」の実態
かつてNTTドコモは携帯電話の「王者」だった。NTTから分離した1992年のシェアは60%を超えていた。
だが、電話番号を変えずに携帯キャリアを切り替える「番号持ち運び制度(MNP)」の下での顧客争奪戦で、KDDIやソフトバンクに負け続けてシェアを落としてきた。足元では楽天モバイルも契約数を拡大させており、争奪戦は一段と激しさを増している。
これに歯止めをかけるため、2024年6月に就任した前田義晃社長は、積極的に販促費を投入してMNPでの反転攻勢を図ってきた。この結果、24年10月のMNPは、ドコモに他社から転入した契約件数が、ドコモから他社に転出した件数を上回る「転入超過(MNPプラス)」を確保。ドコモは決算説明会で、24年10~12月期と25年1~3月期の2四半期連続でMNPはプラスを記録したことを明らかにしている。
さらにドコモはもう一段の勝負に出た。6月5日から、携帯電話の料金プランを大幅に見直して、大容量プランの「ドコモMAX」と小容量プランの「ドコモmini」を導入。これにより、23年7月に導入したばかりの大容量プラン「エクシモ」と小容量プラン「イルモ」はわずか2年で廃止した。
目玉は、スポーツ専門動画配信サービス「DAZN」を見放題にするドコモMAXで、既存の大容量プランより1000円超の値上げとなる。さらに、イルモの廃止に伴って、0.5ギガバイト(GB)のデータ容量を月額550円で利用できる小容量プランがなくなった。
こうした中でドコモの4~6月期のMNPの結果はどうだったのか。特に、新料金プランを導入した6月単月のMNPは今後を占う極めて重要な試金石になる。
ダイヤモンド編集部は取材を通じて、ドコモのMNPのデータを入手した。それによると、新料金を導入した6月単月のMNPは転出超過(マイナス)となり、再び顧客流出が進む恐れのある厳しい結果となった。
次ページでは、この内部データを基に、過去2年分のMNPの実績を公開する。これにより、前田社長の就任以降にMNPのマイナス基調を断ち切った経緯が明らかになった。その上で、内部データによって浮き彫りになったドコモの苦境の実態に迫っていく。