【第23回】 2008年03月06日
ユーロ高の思わぬ副産物。欧州で麻薬ビジネスが大活況
ユーロ紙幣の発行残高は2006年暮れ頃からドル紙幣発行残高を抜いて世界一となっている。その要因の一つとして、非居住者が安全資産として退蔵している現金の一部がドルからユーロにシフトし始めている可能性を2007年12月の当欄で説明した。
さらに、ユーロ高を背景にした欧州の麻薬ビジネスの活況がユーロの高額紙幣を増加させている現象も多少影響しているようだ。世界のアンダーグラウンド業界では、500ユーロ紙幣(約8万円)の人気が非常に高い。通貨価値は上昇しているし、巨額の決済時にかさ張らないからだ。特にスペインでは経済規模に対して500ユーロ紙幣の発行が異様に多い。
2008年1月16日付の「ウォールストリートジャーナル」に興味深い記事が載っている。
もともと近年の欧州では麻薬に対する需要が高まっていた。イタリアでは2005年に人口の2.1%が麻薬を使っていた。4年前のほぼ倍だ。フランスでは成人における使用率が、2000年の0.2%から2005年に0.6%へと3倍に高まっている。スペインでは人口の3%がコカインを使っている。
これにユーロ高が相まって、麻薬業界は欧州でのセールスを重視するようになった。スペインのマドリードでは、2007年前半の時点で、1キログラムのコカインが3.3万ユーロ(約4.4万ドル)で売れた。ロサンゼルスでは1.3万~1.5万ドル、ニューヨークでは1.3万~2.6万ドルなので、欧州のほうがはるかに高く売れるわけだ。
しかし、2001年の同時多発テロ以降、世界的にマネーロンダリングへの監視体制は厳しくなっている。このため、欧州の麻薬バイヤーはきわめて複雑な迂回ルートを使って支払いを行なっている。
500ユーロ紙幣を銀行で大量に入手しようとすると、その時点で捜査当局に捕捉される可能性がある。しかし、スペインでは銀行業や不動産業の内部関係者が絡んでおり入手しやすい。大量の500ユーロ紙幣は、コロンビア、ペルー、ブラジル、チリの通貨ブローカーや両替商のあいだを転々と流れていく。その間に合法的な取引と見分けがつきにくくなっていく。
2007年3月にロサンゼルス空港で、チリから来た両替商が1900万ドル相当のユーロ紙幣をバッグに詰めて持ち込んだところを逮捕された。彼はこの4年半のあいだに約280回も米国に来ており、計2.4億ドルのユーロ紙幣を持ち込んでいた。それをドルに換えて、米国の銀行の口座に入金していた。しかし、彼の弁護士は合法性を主張している。こういった騒動は、ユーロ高の副産物といえそうだ。
(東短リサーチ取締役 加藤 出)
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