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負けないビジネス交渉術

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「借りた金を返さない」が許されるのが米国流

 当法律事務所は、よく日本企業のアメリカ子会社を閉鎖する業務を請け負う。日本の上場企業X社から、経営不振が続くアメリカ子会社Y社の清算について相談を受けたときのこと。巨額の赤字が続き、それ以上赤字を垂れ流すことはできないということで、親会社X社の取締役会において、Y社を清算することを決めたという話だった。

 まず清算の進め方について、X社の日本からの出張者と打ち合わせを行った。X社にとって一番の関心事は債務の弁済についてである。債務合計は300万ドル、債権者数は120社。一方、残余資産は40万ドル。債務合計額が、残余資産額を260万ドルも上回っている。

 「債務を全部支払うのは当然だ」

 「そのためには、親会社から子会社に、足りない分、260万ドルを送金すべきだ」最初は、そんな意見が大勢を占めていた。

 しかし当事務所としては、法律アドバイスにオリジナリティがなくてはいけないと考え、X社に次のような提案をすることにした。それは、「親会社からの送金は一切せずに、残存する資産のみを債権者に分ける。当事務所が債権者との全交渉を代行する」というもの。

 「そんなことできるの? 親会社は黒字で儲かっているんだよ」「親会社の看板に傷がつかない?」などの否定的な意見が続出した。しかし結局、我々の提案は採用されることになった。

 まず手始めに、大口債権者から順に債務の20パーセントの支払いで勘弁してもらいたい旨のレターを送付した。レターには次のようにあった。

 「経営不振により資本金を使い果たし、残余資産がありません。会社閉鎖は本当に苦渋の選択でした。本来はほとんど支払えませんが、今回は特別に、親会社X社の誠意により債務額の20パーセントを支払います。もし残債務を免除してくれるのであれば、添付の和解契約書に署名して送り返してください……」

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著者プロフィール

大橋弘昌
(ニューヨーク州弁護士)

米国ニューヨーク州弁護士。日本国外国法事務弁護士。66年生まれ。慶応義塾大学法学部卒業、サザンメソジスト大学法科大学院卒業。西武百貨店商事管理部、山一證券国際企画部を経て、渡米しニューヨーク州弁護士資格を取得。米国の大手法律事務所ヘインズアンドブーン法律事務所にて5年間プラクティス後、2002年に大橋&ホーン法律事務所を設立。

この連載について

日系企業100社が頼りにする在米敏腕弁護士の交渉ノウハウを初公開!交渉下手な日本人は交渉が始まる前から負けている。駆け引きのセオリーを明かす。

大橋弘昌氏の人気著書「負けない交渉術」

ニューヨークで活躍する敏腕日本人弁護士が、ビジネスに即効で使える交渉ノウハウを伝授。「ノーと言うな、イエス・イフと言え」「ボトムラインにはもっと下があると思え」「自分の主張は円換算して伝えよ」など50項目を厳選。どんな相手とも「ウィン・ウィン」の関係を築く駆け引きのセオリーを明かす。1429円(税別)

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