米FORTUNE誌選出「最も革新的な企業」が日本のAI活用に警鐘

「日本企業ではAI導入はある程度進んでいるが、実際のAI活用では世界に後れを取っている」——。

世界的なITサービス企業であり、イノベーションパートナーとしてさまざまな業界のテクノロジー活用をリードするDXCテクノロジーが、日本の80の組織を含む世界23カ国、2496の組織を対象に独自の調査を実施した。その結果明らかになったのは、「要件を聞いて作って納める」という従来のITサービスモデルでは、AIのビジネス価値は引き出せないという現実だ。日本企業のAI「導入」と「活用」の間に存在する深いギャップがそれを裏付けている。

調査の核心に迫る前に、DXCテクノロジーとはどのような企業なのか、押さえておこう。

同社は、総合的なITサービス事業を展開するグローバル企業で、米FORTUNE誌の「最も革新的な企業」にも選出されている。DXCテクノロジーという社名になってからは約10年だが、前身の会社を含めると、日本でも約50年の歴史を持つ。

DXCテクノロジーの日本法人、DXCテクノロジー・ジャパンの西川望社長は、DXCテクノロジーの強みとして以下の3点を挙げる。

一つ目は、大企業の複雑なコアシステム(レガシー)を熟知していることだ。顧客の業務に直結する基幹システムやインフラ運用など、「なくてはならない領域」を長年支えてきた実績を持つ。顧客自身が把握し切れていないような部分まで含め、「なぜこうなっているのか」を深く理解している点が差別化要因になっている。

二つ目は、アプリ開発、データ分析、SaaS導入、インフラ、セキュリティー、PC運用まで、ITに関わる幅広い領域を自前でカバーする「フルスタックの対応力」だ。

「IT企業には、アプリ、インフラ、セキュリティーなど、それぞれ得意領域を持つ会社が多くあります。当社は、さまざまな領域で独立して強みを持っていた企業やチームが買収や合併を経て融合されてきた歴史があり、それ故にフルスタックで対応することができるのです」

三つ目が、機動力のある組織規模だ。日本法人の従業員は千数百人規模であり、専門性を備えながらも、組織を横断して一つのチームとして迅速に動くことができる。

独自調査で浮かび上がった日本企業が抱えるAI活用の「四つの壁」

あらためて、DXCテクノロジーが実施した独自調査の結果を詳細に見ていこう。

まずAIの使用率は、グローバルが93%なのに対し日本が86%と、日本企業のAI導入はグローバルと比べても遜色ない。しかし、冒頭で触れたように、日本企業のAI「導入」と「活用」の間には深いギャップが存在する。西川社長は、その背景には日本企業のAI活用を阻む「四つの壁」があると指摘する。

第1の壁は、AI活用の目的が業務効率化に偏っている点だ。「日本企業はAIを『労働力のリプレイス』として捉えがちです。もちろん、労働力人口が減っている日本では、業務効率化への期待が大きくなるのは自然です。一方、グローバルでは、AIを自律的な判断やプロセス全体の変革に使おうとする意識がより強い。そこに期待値の違いがあります。つまり、AIを『買って導入する便利な道具』として見ているうちは、事業を変革するエンジンにはなり得ないのです」。

調査データがこれを裏付けている。2026年のビジネス優先事項として、グローバルでは「AIと自動化の拡大」が42%と1位だったのに対し、日本ではこの項目は25%で第5位にとどまる(図1)。

また、AI導入などDX(デジタルトランスフォーメーション)の長期的な目的を問う設問では、日本企業は「社内業務の効率化」が37.5%と1位で最重視しているのに対し、「イノベーション能力の向上(日本26.3%、グローバル36.0%)」や「市場投入の迅速化(日本20.0%、グローバル34.3%)」といった価値創出への期待値はグローバルより大幅に低くなっている(図2)。導入の有無より、AIを何に使うかで差が出ているのだ。

第2の壁は、組織とマネジメントの構造的問題だ。AIを部門単位の取り組みにとどめず、全社へ広げるには、組織をまたいだ連携が欠かせない。調査では、DX戦略について「DXへの取り組みはあるが、事業部門によって異なる」と答えた日本企業は53.8%に上り、グローバルの41.3%を上回った(図3)。同調査の別の設問では、ソフトウエア開発・運用の仕組みであるDevOps(開発チームと運用チームが連携してシステム開発を進める体制)などの整備状況でも、「組織全体で完全に統合されている」と答えた日本企業は4%にとどまり、グローバルの15%を下回っている。

「AI導入はアプリ、インフラ、セキュリティーが一体(フルスタック)となって進める必要がありますが、日本企業は部門ごとに個別のベンダーへ発注する文化も根強く、プロジェクトや部門単位で『サイロ化』しており、全体に広がっていません。また、テクノロジーとビジネス戦略の両方に精通したリーダーシップが不足している組織では、ROI(投資対効果)の検証ばかりに時間を費やし、意思決定が1年単位で停滞する企業も存在します」

第3の壁は、既存システムとデータの問題だ。「日本企業の既存システムは個社ごとの業務プロセスに極限まで最適化されており、非常に良くできています。それ故に、AIとどう連携させるかが技術的に難しいのです」。

既存システムをその場しのぎで改修し、抜本的な解決を後回しにしてきたツケ、いわゆる「技術的負債」は、多くの企業にとって重要な課題だ。調査でも、技術的負債を「重要な問題」と認識している割合は日本(58%)、グローバル(60%)共に高い。しかし「組織全体を網羅した専用の戦略を採用している」企業は日本が43.8%にとどまり、グローバル(53.4%)を下回っている(図4)。問題は認識していても、全社の取り組みには結び付いていない。

また、日本企業においては、技術的負債の解消に対するAI活用の期待値が低いことも分かる。「AIが技術的負債の解消に役立つ」と回答した日本企業は11%(グローバル33%)にとどまったのに対し、「AIが技術的負債に与える影響はほとんどないか、もしくはまったくない」と回答した企業は36%(グローバル19%)に上っている(図5)。

さらに深刻なのは、データそのものがAIに対応できる状態になっていないことだ。データ成熟度の調査において、「自動化パイプラインを持つAI最適化データ」を保有する日本企業はわずか5%(グローバル15%)であり、41%の企業が「データが断片化・サイロ化している」と回答している(グローバル30%)。AIを本格的に活用するには、データを保有するだけでなく、AIが使える形に整える必要がある。

そして第4の壁は、人材と教育の問題である。調査では、「正式にAI領域をリードする役職者がいる」と答えた割合は、日本企業が42.5%で、グローバルの38.7%を上回った(図6)。日本企業でも、AIを推進する責任者や役職は置かれ始めている。

一方で、「AI関連のトレーニングやリスキリングを受けた従業員がいる」と答えた割合は、日本企業が32.5%にとどまり、グローバルの46.5%を大きく下回った。AIをリードする役割は置かれているものの、現場の従業員がAIを使いこなすための教育や実践機会は十分に広がっていない。

この差の背景に、西川社長は日本特有の「中央集権型」アプローチがあるとみる。「日本は、現場にAIを導入する前に、ガバナンスや使い方のルールを全部整えてから渡さなければという感覚が強い。でもそれをやっているうちに、どんどん新しいものが出てきてしまいます」。

一方、グローバルではガバナンスのフレームワークだけを整えて、具体的な使い方は現場に委ねるアプローチが主流だ。「AIの導入に時間がかかっている上、教育もできていない。2サイクル遅れているような感覚があります」と西川社長は危機感をあらわにする。

さらに、今後12カ月のIT人材の数について聞いた設問では、増加させると回答した日本企業は69%で、グローバルの85%を大きく下回った。デジタル領域の新たな技術に対する人事的な投資の積極性が弱いこともうかがえる。

悲観する必要はない。日本の「擦り合わせ力」がAI時代の武器になる

課題は山積しているが、西川社長は「決して悲観する必要はありません」と言い切る。その根拠は、日本人が長年培ってきた「擦り合わせ」の能力にある。

「日本人は、ゼロから発明することは苦手かもしれません。しかし、既存のものを擦り合わせて改善する力、すなわちインテグレーションは世界一だと思います。自動車産業がまさにそうです。AIは、買ってくればそのまま全自動で動くような『パッケージ(既製品)』ではありません。もっと言えば、AIでビジネス価値を生み出すために本当に必要なものは、要件定義書には書けません。現場に入り込んで初めて見えてくるものです。現場でいかに個社の複雑な業務システムや細かなプロセスと擦り合わせて、実際のビジネス価値を生み出すかが勝負になります。これこそまさに、日本のエンジニアや現場が最も得意とする領域であり、大きなアドバンテージなのです」

人材の役割分担も変えていく必要がある。西川社長は、AI導入のような新しい取り組みでは、若手とシニアがそれぞれ得意なことを生かす体制が重要だと語る。

「新しいアプローチを考えるのは、経験の浅い若手の方が得意な面があります。シニアは、若手のやり方に細かく口を出すのではなく、最終的な結果が正しいかどうかを判断する役割に集中した方がいい。そういう役割分担が大切です」

新しい技術を扱う若手の柔軟性と、長年の経験を持つシニアの判断力を組み合わせる。AI時代の組織には、こうした役割の組み直しが求められる。

AIを現場の改善で終わらせず、事業変革へつなげる実装力

DXCテクノロジーが「最も革新的な企業」に選出されているのは、単にソリューションやサービスが優れているからではない。AIを導入するだけで終わるのではなく、それを事業変革による成果につなげる実装力と運用能力が評価されているからだ。グローバルと日本における導入事例が、それを端的に示している。

世界23カ国に3万2000人の従業員を抱える航空宇宙・防衛大手の米テキストロンでは、グローバルで一貫性と信頼性の高いITサポート環境の構築が課題となっていた。DXCテクノロジーは、AI、機械学習、自動化技術を活用した新サポートモデルを導入。AIによるチャットボット、自己解決ツール、ネットワーク監視システムなどを構築し、IT運用を効率化した。その結果、サービスデスクへの問い合わせ数が20%減少したほか、システムのダウンタイム短縮、障害の早期検知、資産管理のスマート化を達成。より俊敏でコスト効率の高いグローバルなワークプレイス環境を実現している。

国内においても、注目すべき成果が生まれている。日本の大手銀行では、重要な基幹システムが特定のデータベース技術に深く依存し、新しいビジネスへの対応やクラウド適応が難しい「守りのIT」に固定化されていた。加えて、別システムへの大規模移管には膨大な開発工数と費用がかかるという構造的課題も抱えていた。

DXCテクノロジー・ジャパンはこれに対し、変更に強い最新の設計手法を採用するとともに、米Cognitionが提供するAIエージェント「Devin」を実装パートナーとして導入。「人間が設計判断や品質保証を行い、AIが反復実装や確認を行う」という新たな分業体制を確立した。その結果、大規模移管にもかかわらず開発工数を約30%削減することに成功。特定企業への依存も構造的に解消され、ビジネスの変化へ迅速かつ柔軟に対応できる「攻めのIT」への転換基盤を獲得している。

西川社長は「これらは要件定義書を頂いて納品するという従来のやり方では到達できない成果です。お客さまの現場に入り込み、お客さまと一緒にAIからどのようなビジネス価値を獲得したいのか、そして具体的にどう組み込むかを判断したからこそ実現できました」と語る。

深い知見とフルスタックの対応力で日本企業の変革を支援

日本企業がAI活用を阻む「四つの壁」を乗り越えていくためにはどんなパートナーが必要なのか。西川社長は、DXCテクノロジー・ジャパンが提供できる価値を「日本の大企業の基幹システムとインフラを何十年も支えてきた歴史と経験」と「全IT領域をカバーするフルスタックの専門性」の掛け算だと表現する。

「AIを導入しようとすると、必ずインフラやセキュリティーなどさまざまな領域にまたがる問題が発生します。フルスタックの体制がないと、この壁を乗り越えることができません。当社は、アプリ開発、データ分析、インフラ、セキュリティー、PC運用まで全てをカバーする専門チームが一体となって動けるため、提案から実装まで一気通貫で支援することができます」

【世界23カ国で独自調査】DXCテクノロジーが示す、日本企業のAI活用を阻む「四つの壁」を乗り越えるための処方箋DXCテクノロジー・ジャパン
代表取締役社長
西川 望

AIを単なる「部分的な省力化ツール」で終わらせるか、既存の優れたシステムと擦り合わせて「ビジネスプロセス全体の変革エンジン」へと昇華させるか——。その決断と組織のサイロを打破するリーダーシップこそが、いま日本企業のマネジメント層に問われている。DXCテクノロジー・ジャパンは、その歴史に裏付けられた深い知見と、俊敏なフルスタックのデリバリー能力をもって、日本企業のスピード感ある変革を力強く支援していく構えだ。

●問い合わせ先
DXCテクノロジー・ジャパン株式会社
〒104-0031 東京都中央区京橋2-2-1 京橋エドグラン17階
TEL:03-6665-0222(代表電話)
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