ダイヤモンド社の雑誌

SPORTS セカンド・オピニオン

このページを印刷

バックナンバー一覧

アマから直接メジャーリーグへ。
「田沢問題」が突いたドラフト制度の盲点

――「職業選択の自由」は「紳士協定」を超えられるか?

 日本プロ野球界を揺るがしている「田沢問題」。ドラフト制度の根幹にも係わるこの問題を受け、日本プロ野球組織(NPB)は田沢に続く選手が出ないよう、アマチュア3団体に対して要望書を提出した。

 何のことか分からない人のために、この「田沢問題」の概略と経緯を説明しておこう。

「直接メジャーへ行きたい」
プロ野球界を震撼させた田沢の宣言

 「田沢」とは社会人野球チーム・新日本石油ENEOSに所属する田沢純一投手のこと。最速156キロのストレートを武器に持つ本格派で、今夏の都市対抗野球での優勝にも貢献した。現在のアマチュア球界最高の投手と見られており、ドラフト会議では複数球団から1位指名を受けることは確実だった。

 問題は、その田沢が日本のプロ野球をソデにしたことから起こった。都市対抗野球後に行なった記者会見で、メジャーリーグに挑戦する意思を表明。日本のプロ野球12球団に対して、ドラフト指名を見送ることを求める文書を送付したのだ。

 野茂をはじめとして日本のプロ野球からメジャーに挑戦した選手は数多い。また、日本のドラフトにはかからなかったが、プロになる夢を捨てきれず、「日本がダメならアメリカで」と米・マイナーリーグに挑戦する選手(西武のG.G.佐藤など)もいた。

 しかしドラフト候補が、日本のプロ野球を経由することなく“直接メジャーに”行こうとするのは田沢が史上初。これにプロ野球界は騒然となったのである。

日米の「紳士協定」に亀裂?
メジャーが事前接触の可能性も

 日米のプロ野球界には「紳士協定」がある。「互いのドラフトは尊重する」というもので、両者のドラフト候補選手を獲得することは避けようという暗黙の了解である。だが、今回の田沢のように「本人の希望」なら話は別。もしメジャー側がそれを拒めば、「職業選択の自由」を侵害することになる。自由の国アメリカとしては、自らチャレンジしようとしている選手を受け入れるのは当然という論理になるのだ。

 ちなみにメジャーリーグでドラフトの対象となるのは、本国アメリカ、カナダ、プエルトリコの選手のみ。それ以外の国の選手は自由に獲得できる。当然、日本の選手はドラフトの対象ではない。よって上記の「紳士協定」は、事実上「日本のアマチュア選手(ドラフト対象選手)には手を出さないでくださいね」という日本側からメジャー側へのお願いだったといえる。

 野茂やイチロー、松井秀、松坂など日本からメジャーに移籍した選手たちの活躍で、日本選手はメジャーでも通用することが証明された。そんな選手がドラフトを通さずに獲得できるのはメジャーにとっては非常においしい話である。そこで、アマチュアの有望選手に密かに接触し、水面下で契約を確約したうえで「メジャーを希望します」と本人にいわせればいい、というやり方も考えられるのである。

 田沢は「紳士協定」に触れることを懸念してか、メジャーからの交渉はないと語っていたが、記者会見を開きメジャー挑戦を明言したところを見ると、メジャーの球団から何らかの接触があったと考える方が自然だ。そんな田沢が先例となって、アマチュアの有望選手が続々とメジャーリーグを目指すようになったら、日本のプロ野球は空洞化してしまうというわけである。

おすすめ関連記事

ソーシャルブックマークへ投稿: このエントリーを含むはてなブックマーク この記事をYahoo!ブックマークに投稿 この記事をBuzzurlに投稿 この記事をトピックイットに投稿 この記事をlivedoorクリップに投稿 この記事をnewsingに投稿 この記事をdel.icio.usに投稿

Special Topics

バックナンバー

Pick Up

経済ジャーナリスト 町田徹の“眼”

人民元切り上げ拒む中国のエゴに、 日本政府はしたたかで賢い対応を

今年の中国全人代は、世界第2位の経済大国の座を目前にしながら‥

格差社会の中心で友愛を叫ぶ

“勝ち組”の足元にも死の落とし穴!? 自殺大国ニッポンで男たちが死に急ぐワケ

約16分にひとり。今、日本ではこんなハイペースで自殺が起きて‥

公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略

“不況に強い”にも関わらず売上急減!? 医薬品業界を襲う「2010年問題」とIFRS

ディフェンシブ銘柄とは、現在のようなデフレ状況下においても「‥

新着トピックス

チャンスを逃さない! 今どき「住活」事情 By SUUMO(スーモ)
エコポイントがなくても人気は絶大? 想像以上に盛り上がる「エコ住宅」ブーム
働き盛りのビジネスマンを襲う 本当に怖い病気
手足のひび割れと関節痛が同時に!? 骨の変形をも引き起こす皮膚病の正体
inside
大手マンション会社も注視する「シェアハウス」の“選択基準”
献魂逸滴 極上の日本酒を求めて
信濃鶴――伊那谷から飛来した「鶴」は高CPで香り高き純米酒
これが気になる!
地方の『美少女図鑑』に“萌え”の行列! 大手マスコミだけが知らない儲けの新常識
経済ジャーナリスト 町田徹の“眼”
人民元切り上げ拒む中国のエゴに、 日本政府はしたたかで賢い対応を
格差社会の中心で友愛を叫ぶ
“勝ち組”の足元にも死の落とし穴!? 自殺大国ニッポンで男たちが死に急ぐワケ
公認会計士・高田直芳 大不況に克つサバイバル経営戦略
“不況に強い”にも関わらず売上急減!? 医薬品業界を襲う「2010年問題」とIFRS
田中秀征 政権ウォッチ
鳩山首相「発言のブレ」正当化に疑問を呈す
「稼げるチーム」をつくる!営業マネジャーの教科書
叱っても部下が辞めない!? 上司が知っておくべき「叱る技術」
「超都心」にアツい視線!
2009マンション人気ランキング発表。NO.1物件は?

最新の連載一覧

すべての連載

特集を見る

Diamond Premium 最新記事 無料会員登録すると全文が読めます

短答直入
大幅人員削減で業績改善へ 売上高3兆円計画は達成可能 住友電気工業社長 松本正義
金融市場異論百出
超インフレ国はジンバブエのみ 世界が学んだ「最低限の規律」
週刊ダイヤモンド 企業特集
ユニー 前村哲路社長インタビュー 「現場の自由裁量権を広げ 個店経営のウエートを高める」
『社会貢献』を買う人たち
キレイになって、途上国を支援! 女性の飽くなき「美への探求」が生んだ、一石二鳥のビジネスモデル
起業人
地方に埋もれたうまい食材を発掘し 築地市場に乗り込んだ風雲児 食文化社長 萩原章史
山崎元のマネー経済の歩き方
対等合併の呪
野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む
総需要の減少をもたらした2つの要因 ──今こそ必要なデフレの経済学(5)
岡野工業・岡野代表エッセイ
“神の手をもつ男”岡野雅行氏が日本の物づくりに「常識を捨て去れ」と喝!
DOL編集部のツイッターを開始
最新記事の話題から編集部の日常まで、24時間つぶやきます。フォローよろしくお願いします。

著者プロフィール

相沢光一
(スポーツライター)

1956年埼玉県生まれ。野球、サッカーはもとより、マスコミに取り上げられる機会が少ないスポーツも地道に取材。そのためオリンピックイヤーは忙しくなる。著書にはアメリカンフットボールのチーム作りを描いた『勝利者』などがある。高校スポーツの競技別・県別ランキングをデータベース化したホームページも運営。 「高校スポーツウルトラランキング」

この連載について

サッカーから野球、大相撲や陸上に至るまで、あらゆるスポーツニュースを独自の視点で解説!スポーツニュースの「セカンド・オピニオン」を目指します。

Recommend 話題の記事

週刊・上杉隆
元秘書として鳩山邦夫氏に苦言を呈す 信念の見えない離党に意味はあるのか?
China Report 中国は今
優秀な中国人学生を採用できなくなった日本企業
IFRS最前線
「のれん償却廃止」で利益が乱高下!? IFRSで変わるM&A戦略の行方
田中秀征 政権ウォッチ
鳩山首相「発言のブレ」正当化に疑問を呈す
News&Analysis
日本が望みを託す宇宙開発の切り札! 「宇宙エレベーター」の知られざるシナリオ
山崎元のマルチスコープ
官民一体の海外ビジネス受注期待を怪しむ
エコカー大戦争!
ハイブリット車は主力製品にならない! 車文化を食い潰した日本には真似できない 欧州自動車メーカーの腹のくくり方
ミドルマネジャーのための「不機嫌な職場」改革講座
この閉塞感はどうにもならないのか? 組織の成果を最大化する人事制度とは
SPORTS セカンド・オピニオン
大リーグ球団にとっての、日本人選手の価値を考える
政局LIVEアナリティクス 上久保誠人
参院選がどう転んでも、 政界の「世代交代」加速は止められない

雑誌定期購読のご案内


詳しくはこちら

特大号・特別定価号を含め、1年間(50冊)市価概算34,500円が、定期購読サービスをご利用いただくと25,000円(送料込み)。9,500円、約13冊分お得です。さらに3年購読なら最大49%OFF。


詳しくはこちら

1冊2,000円が、通常3年購読で1,333円(送料込み)。割引率約33%、およそ12冊分もお得です。
特集によっては、品切れも発生します。定期購読なら買い逃しがありません。


詳しくはこちら

年間12冊を定期購読すると、市販価格8,400円が7,150円(税・送料込み)でお得です。お近くに書店がない場合、または売り切れ等による買い逃しがなく、発売日にお手元へ送料無料でお届けします。
※別冊・臨時増刊号は含みません。


詳しくはこちら

偶数月の1日発売(隔月刊)。1年購読(6冊)すると、市販価格 5,880円→4,700円(税・送料込)で、20%の割引!
※別冊・臨時増刊号は含みません。

お知らせ・ご案内

会員専用ページ開始のお知らせ
7月より一部の記事で、無料会員登録した方だけが全文を読める形に変わりました。詳細はこちらをご覧ください。