日本の株が他国にもまして売り込まれている理由を、「外国人投資家が改革を後退させていることに失望したから」とする解説をメデイアで頻繁に見かける。私ははなはだ疑問に思っている。
外国人投資家が何をもって改革の後退だと失望したのかよくわからないし、彼らが評価し、株を買いたくなるような改革が果たして日本の国民にとっていい改革かどうかも怪しい。例えば、小泉純一郎元首相が郵政解散に臨んだとき、株価は暴騰した。
あれほど雑駁な制度設計の民営化案を真の日本改革だと熱狂したということは、外国人投資家は単にイベントやサクセスストーリーを欲しがっているだけなのだと考えたくなる(私は決して民営化に反対ではない。今回の民営化スキームは筋が悪いと考えているだけである)。
しかしながら、福田政権が総合的な改革ビジョンを持っているわけでも、優先順位をつけて実行しようとしていないのも、多くの人びとが実感するところだろう。
では、今最優先で取り組むべき改革はなんだろうか。私は財政問題でも社会補償問題でもなく、労働市場改革だと思う。論点を絞れば、「正社員と非正社員の処遇格差問題の解決」が、最も必要な改革である。
現在、日本社会に影を落とし、閉塞感を高め、人々の多くが変化に前向きになれないのは、さまざまな格差問題が発生し、そこかしこに不平等感が募っているからだろう。その格差問題のなかで最も深刻なのは、正社員と非正社員の処遇格差であろう。同じ仕事をしているにも関わらず、片方にしか昇給昇進の道は開かれていない。
彼らは好きこのんで非正社員を選んだのではない。とりわけ、1990年代半ばから10年ほどの間に社会に出た若者とって就職氷河期が続いた。それは明らかに政府のマクロ経済政策の失敗で、彼らの責任ではない。といって、再挑戦の場などないに等しく、社員になるのはひどく難しい。こうした状況を放置すれば、ワーキングプアたちの生活の荒廃から社会の劣化が進むだろう。