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みずほグループへの「最期の警鐘」
第一勧銀最後の頭取、杉田力之氏を悼む

 1999年2月末、杉田力之・第一勧業銀行頭取(当時)は、快哉を叫んだ。

 金融危機の最中にあった当時、東京三菱銀行以外のすべての銀行が水面下で大型再編に動いていた。第一勧銀も他行同様、不良債権処理に苦しみ、加えて、総会屋事件の後遺症に悩まされていた。その2年前の97年、第一勧銀は総会屋への利益供与事件で頭取を含む11人もの逮捕者を出し、多くの役員が引責辞任、信用は失墜し、巨額の預金が流出した。この未曾有の経営危機を受け、54歳の異例の若さで常務から就任したのが杉田頭取だった。

 杉田頭取は、「質の補完」と「規模の拡大」を同時に満たす再編が必要だと考えた。それも、それ以後、いかなる再編劇が起きても圧倒的1位を保てる決定的再編を欲していた。実は、その前年、富士銀行(当時)から合併の申し込みは受けていた。だが、富士だけでは、彼の構想する再編を果たせない。実現できるかどうか自信などなかったが、数え切れないシミュレーションの結果、なすべきは三行統合だと結論付けていた。

 リテール業務に基盤を置く巨大な都市銀行二行に加えるべき銀行は、ホールセール業務の雄である日本興業銀行だった。だが、自分からは動かなかった。物欲しげに振る舞ったのでは足元を見られ、その後の主導権が取れない。ひたすら待つ杉田頭取に、興銀からアプローチがあったのが冒頭に記した99年2月末であった。

 当時、金融界では誰も三行統合などという発想をしていなかった。三行が合体した巨大な組織を、果たしてマネジメントできるか否かそもそも疑わしかった。杉田頭取から水を向けられても、西村正雄・興銀頭取(当時)も山本恵朗・富士銀行頭取(当時)もまったく乗り気ではなかった。それどころか、2人ともうちだけとやろう、二行だけで競争力は十分得られる、と迫った。彼らには固有の反対理由もあった。長期信用銀行である特性上、行員数が少ない興銀は三行のなかに埋没し、存在感を失うのを恐れた。富士はその5年ほど前、興銀に合併を持ちかけたが門前払いを食ったという過去から、不信感を抱いていた。杉田頭取は三行統合が必須であると、年上の2人に縷々説いた。西村頭取は11歳も年長だった。

 さまざまな交渉、取引、計算、思惑が働いて、三行統合はなった。そのいちいちをここには記さないが、杉田頭取が西村頭取から信頼を勝ち得たことが、大きな歯車になったことは間違いない。西村頭取が「杉田君は信用できる。彼は何においても私する人物ではない」というのを、私は何度も聞いた。歴史は時が経つにつれ、当事者たちが自らの立場に都合のよい説明、回顧を重ねるために、いくつもの”真実“を持つようになる。だから、ここにあえて記しておく。三行統合を発案し舞台を回したのは、杉田頭取であった。それは、第一勧銀が当時は相対的に不良債権の傷が小さいとおもわれていたことと、彼の人間性による。

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著者プロフィール

辻広雅文
(ダイヤモンド社論説委員)

1981年ダイヤモンド社入社。週刊ダイヤモンド編集部に配属後、エレクトロニクス、流通などの業界を担当。91年副編集長となり金融分野を担当。01年から04年5月末まで編集長を務める。主な著書に「ドキュメント住専崩壊」(共著)ほか。

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