【第27回】 2008年05月14日
「食糧高騰に苦しむ途上国」を見殺しにする強者の論理
200年前の亡霊が甦る。その著書「人口論」で暗黒の未来を予測した経済学者T・R・マルサスの亡霊が、立ち上がる。
世界的に食糧が高騰している。
天候異変に――地球温暖化問題が色濃い影をさす――穀物生産国が大打撃を受けた。小麦価格高騰は、06年のオーストラリアの干ばつから始まった。
台風の被害を受けた有数のコメ輸出国のベトナムは06年末から輸出を規制、インドも続いて禁止してしまった。エネルギー問題が絡んで急増するバイオエタノールの生産は、大量のトウモロコシを原料とする。そうして需給バランスが大きく崩れたところに、投機資金が流入した。
途上国ではコメ、小麦価格が2倍ほどにも跳ね上がり、引きずられて消費者物価が上昇を始めた。
5月4日から3日間「食糧暴発」という特集を組んだ朝日新聞によれば、エジプトやカメルーンでは、パンなどの高騰で暴動が発生、死者が出た。ケニアでは子どもたちが飢え苦しみ、世界食糧計画(WFP)の支援を待ち望む。何時間並んでもコメを買えないバングラデシュでは、政府がジャガイモを主食にするよう奨励を始めた。アジア開発銀行は、途上国の貧困層への支援プログラムを詰めている。
これを一過性の食糧危機とは、誰しも言い切れまい。食糧需要の増加、環境問題の悪化の背景には、途上国、新興国の成長による世界人口の急増があるからだ。1801年には9億人、1901年には16億人、1950年に25億人だった世界の人口は2007年には66億人にまで膨れ上がったのである。
ここで少なからぬ人が、かって社会科で習ったマルサスの「人口論」を思い出すだろう。
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- 辻広雅文
(ダイヤモンド社論説委員)
1981年ダイヤモンド社入社。週刊ダイヤモンド編集部に配属後、エレクトロニクス、流通などの業界を担当。91年副編集長となり金融分野を担当。01年から04年5月末まで編集長を務める。主な著書に「ドキュメント住専崩壊」(共著)ほか。
この連載について
政治・経済だけではなく、社会問題にいたるまで、辻広雅文が独自の視点で鋭く斬る。旬のテーマを徹底解説、注目の連載です。
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