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景気刺激策法案に共和党が徹底して反対した米国の“健全”

 米国で、「景気刺激法案」が上下院を通過した。7870億ドル(72兆5000億円)という一度の規模としては世界でも過去最大級の財政出動が、新政権発足からわずか1か月という異例の速さで動き出すのは、大恐慌の再来もありえる極度の経済悪化に対する強い危機感からであろう。

 だが、政策決定に関わる人々すべてが強い危機感を共有していたとしても、同じ政策を支持するとは限らない。実際、景気刺激法案通過に際して、オバマ大統領は公約した「超党派合意」を果たせなかった。共和党が徹底して反対したからである。それは米国政治の健全さ、力強さを証明しているのだと、私は思う。

 日本のメデイアだけに触れていると、世界は先進諸国も新興国も財政出動一色に染まっているかのように思えるが、震源地の米国にして違う。今回の景気刺激策について共和党は、「伝統的民主党のバラマキ政策に過ぎず、景気刺激策としても有効ではない」と反対を貫いた。米メデイアを通じて共和党議員らの発言をチェックしてみると、「未曾有の不況だからだといって、なしくずしに景気浮揚にならない道路など公共事業を拡大してはならない」、「仮面の下の顔は(民主党の支持基盤の)組合に向いている」、「巨額な財政出動を行って失敗するリスクより、最小限の対策しか行わないリスクを取るべきだ」・・・・小さい政府の信奉者たちは、懐疑をあからさまに並べ立てている。

 こうした共和党の反対は、決して野党根性による反対のための反対ではない。なぜなら、経済学の定説を背景にしているからである。2年ほど前まで、つまりサブプライムローン問題が発生する前までは、「裁量的財政政策(注1.フィシカルポリシー)は景気刺激策としては有効ではなく、非効率的である」という考え方が、世界中の経済学者のコンセンサスだった。言い換えれば、「財政の健全化が持続的な経済成長をもたらす」という考え方が、先進諸国間では常識であったのである。

 注1.裁量的財政政策とは、政府が経済情勢の変化に合わせて政策を変更し、公共事業を増やしたり減税したりすることを指す。

 とりわけ米国では、1980年代以降、経済安定化の役割は「金融政策が担うべきだ」という考え方が支配的になった。

 そう考えられてきた理由は、いくつか考えられる。1970年代後半、財政支出拡大を中心にした総需要喚起策が欧米諸国で実行された。だが、景気の回復には至らず、むしろ経済の体質が悪化する中で膨大な財政赤字だけが残される結果となった。

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著者プロフィール

辻広雅文
(ダイヤモンド社論説委員)

1981年ダイヤモンド社入社。週刊ダイヤモンド編集部に配属後、エレクトロニクス、流通などの業界を担当。91年副編集長となり金融分野を担当。01年から04年5月末まで編集長を務める。主な著書に「ドキュメント住専崩壊」(共著)ほか。

この連載について

政治・経済だけではなく、社会問題にいたるまで、辻広雅文が独自の視点で鋭く斬る。旬のテーマを徹底解説、注目の連載です。

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