ジョージ・ソロスの右腕として10年間で4200%という驚異的なリターンを実現したことで知られるあの伝説の投資家、ジム・ロジャーズが、長年住み慣れたニューヨークを後にし、シンガポールに活動の拠点を移した。理由は明快だ。米国よりアジアに確かな未来を感じたからだという。稀代の相場師は、週刊ダイヤモンドとのインタビューで、サブプライム・ローン問題に揺れる米国経済の行方にひときわ厳しい評価を下した。
ジム・ロジャーズ |
週刊ダイヤモンド(以下D.W):米国を離れ、シンガポールに移住した理由は何ですか?
ジム・ロジャーズ(以下J.R):端的に言えば、中国語圏の都市に移住したかったからです。
ひとつはパーソナルな理由によるものです。私には中国語が話せる4歳の娘がいますが、その語学力をさらに伸ばしてあげられるような環境に移りたかった。その点、英語や中国語などを公用語とするシンガポールは移住先として申し分ありませんでした。
ただ、それだけではありません。私自身、“未来の波”に乗りたかったからです。現在の中国語圏に居を構えることは、1907年のニューヨーク、1807年のロンドンで暮らすことに等しいと思っています。
D.W:しかし、なぜ北京や上海ではなくシンガポールなのですか?
J.R:むろん北京や上海などの中国本土の大都市に加えて、香港も考えました。しかし、公害がひどく、どうしても踏み切れなかった。その一方で、シンガポールには優れた医療や世界最高レベルの教育制度があり、これから先何年も住みたい場所だと思ったのです。
D.W:米国に住んでいては、あなたのいう未来の波に乗れないと考えたのですか?
J.R:こう答えましょう。私が後にした米国経済は今、ひどい状態にあります。サブプライム・ローン問題で広がった膿を出し切るまで、あと5~6年はかかるはずです。