3K職場の代表格とされるのが介護職なら、新3K(「きつい、きりがない、帰れない」)で知られるのがIT系。皮肉なことにこの2つ、かつてはどちらも国が“雇用の受け皿”とおおいに持ち上げた産業だ。

 ところで元祖3Kとされる建設現場は、今や3Kどころか「勤務日激減」「掛け持ち仕事」「過労死寸前」という“死の3K”職場と化している。泥縄式の公共投資を止め、「コンクリートから人へ」を断行する現政権下で、何が起こっているのか。

 現場の話を聞いてみた。

生きるために
ダンピングする人々

 宵の口の電車内。座席には作業着のまま缶チューハイをあおり、柿ピーを頬張る若い男性がいる。とうに居酒屋は開店している時刻だが、飲み代を節約しているのだろうか。

「明日は新宿公園か、天国か――」“救急車も呼んでもらえない建設現場”の悲惨

 「明日は新宿公園か、天国か」

 最近、建設業界で冗談まじりに囁きかわされるというセリフがこれだ。談合なき後の業界で起こっている価格競争と、それによってもたらされる強烈なデフレスパイラル。しわ寄せをかぶるのは、言うまでもなく末端だ。どこの業界でも見られる構図だが、建設業界の場合はまさに崖っぷち。生きるためのダンピングが彼らの生活と健康を脅かしている。

 東京都の建設職人Aさんはこんな話を明かしてくれた。

 「このまえ現場で知り合いの土工が倒れたんだよ。モリちゃんっていって、女の人。年はそうだな、57、58歳ってとこかな。倒れる前『あたし、1週間に12日分働いてんのよお。すごいでしょ』って笑ってた。

 先月と先々月、ほとんど仕事がなかったせいで、生活に困っていくつか現場を掛け持ちしたんだそうだ。夜間の作業のあと昼間も働いて、ぶっ通しで仕事をする生活を続けていたんだって。そりゃあ、体を壊すのも無理はないわな。

 しかもさ、倒れた後どうなったと思う? みんなが驚いて救急車を呼ぼうとしたら、現場監督が止めたんだ。結局、会社の車で病院に行ったのよ。

 理由? そりゃあ、現場に救急車が入ったなんて知れたら大変だからね。当然、病院から警察に連絡がいくだろうし、ひょっとすると作業がストップしかねない。どういう働き方をさせたんだ、ってことになるでしょ」