現代のリーダーには、あまりに多様かつ大量の仕事が課せられている。そのため、たいていの場合、慢性的な睡眠不足である。ただ、多くの研究が示すように、あなたが睡眠不足に陥ると、自分の仕事がうまくいかないだけでなく、部下にも迷惑をかけることになる。本記事では、超多忙なリーダーが十分な睡眠を確保できる生活を送るための、4つの具体的なステップを提示する。


 シェイクスピアいわく、「王冠を戴くものは安心して眠れない」。現代語で言い換えれば、リーダーの仕事に終わりはない。たとえ継続中の案件を1日の終わりにデスクから片付けても、リーダーの仕事は終わっていない。リーダーは現在を管理すると同時に、将来に備えなければならないのだ。リーダーには常に、もっとできること、よりよくできることがある。

 そのため多くのリーダーが、こうした要求に応えるために長時間働くのは、驚くに当たらない。最近の例では、イーロン・マスク(現在、テスラとスペースX、およびニューラリンクの3社のCEOを兼務)は、47歳の誕生日を24時間働いて過ごした。マリッサ・メイヤー(ヤフー元CEO)は、働き始めた頃は少なくとも週に1回は徹夜で働いていたと述懐する。ドナルド・トランプ米大統領は自身の労働倫理を自画自賛して、「必要以上に眠ってはいけない。私の睡眠時間は通常4時間程度だ」と述べている

 これらの例は氷山の一角にすぎない。体系的研究によれば、リーダーの睡眠不足は組織の下部でも、ごく日常的に見られる

 だが、睡眠不足のリーダーは、効率の悪いリーダーでもある。こなす仕事の量を増やすために睡眠を削ると、部下に対して横暴に振る舞う傾向が強まり、配下にある社員と仕事上の関係がうまくいかなくなり、周囲をやる気にさせる能力が低下し、ひいては率いるチームのエンゲージメントのレベルも下がってしまう。そしてもちろん、睡眠不足は衝動性を高め、意思決定を妨害し、創造性イノベーションをむしばむ。働く時間を余分に確保するために睡眠を犠牲にしていると語るトランプとマスクが2人とも、衝動的なツイートをすることがあるのは、おそらく偶然の一致ではない。

 日ごろから十分な夜の睡眠を確保していれば、より優れたリーダーシップを発揮できることを、渋々ながら認めるリーダーも現れ始めている。だが事実を認めることは、睡眠時間を確保するために必要なライフスタイルの変革を実践することよりも、はるかに容易だ。

 いますぐ完了すべき緊急のタスクは常にもう1つあり、いまやらないと恐ろしいことになると、リーダーであるあなたは自分に言い聞かせる。あと1時間だけ寝るのを遅らせよう。睡眠時間はそのうち、週末にでも取り戻せばいい。いまはポット1杯のコーヒーで嵐をのり切ろう。そのうちいつか、それほど忙しくないときに一気に睡眠をとろう……。

 だが言うまでもなく、「それほど忙しくないとき」は決して訪れない。なぜなら、同じことが次の晩も、その次の晩も起こるからだ。

 正しい方向に向かって、より有意義な1歩を思い切って踏み出す必要がある。そのために、重要な質問をみずからに問いかけよう。今晩はどこで見切りをつけるべきか。十分に休息をとって、ベストコンディションで明日を迎えるには、今晩何時に仕事を切り上げるべきか。