企業の価値は人で決まる。優秀な人材を採用し、最適な育成を実現するうえで、データの活用がカギを握ることは間違いない。だが筆者らの調査によると、人事部門のリーダーのデータスキルは、他部門のリーダーと比較して大きく劣ることが判明した。本記事では、人事担当者のデータスキルを強化するための4つの対策を示す。


 ほとんどの人事プロフェッショナルのデータスキルを簡潔に言い当てている、古いことわざがある。「紺屋の白袴」(他人のことに忙しくて、自分自身や身内のことに手が回らないことの喩え)である。

 現在の逼迫する労働市場において、全社的にデジタル変革を推進する人材を採用・育成するために、人事リーダーはたゆむことなく努力しなくてはならない。けれども、ほとんどの人事リーダーは、自分自身のデジタル能力の強化に四苦八苦している。この点をいままで疎かにしてきたせいで、自社の変革に資することができる人材戦略を策定するうえで、データを十分に活用できずにいるのだ。

 人事リーダーのデジタル・スキル・ギャップに関する主張は、筆者らが行った最新のグローバルリーダーシップ調査の結果に基づいている。

 筆者ら3人それぞれの所属組織が共同実施した同調査では、リーダーシップの現状と経歴について、さまざまな業種にわたる2万8000人近くのビジネスリーダーを評価した。その結果、たとえば、高度にデジタル化された環境で業務を遂行する能力や、データを利用して意思決定に導く能力において、人事リーダーは平均して、他の専門職リーダーよりも大きく後れを取っていることがわかった。

 このスキルギャップが人事リーダーと他の専門職リーダーの間の信頼性ギャップに拍車をかけているのは、驚くに当たらない。「人材ニーズを見越し、それを満たすのに役立つようデータを駆使できる」と、人事担当者を信頼しているビジネスリーダーは、わずか11%である。3年前に実施した同様の調査では、そのように感じていたビジネスリーダーの割合は20%だった。けっして高くないとはいえ、今回の2倍近い数字だった。

 人事担当者のデジタル感覚とデータスキルを磨く方法を見つけることは、経営資源が揃った一流企業にも難しい課題といえる。

 人事リーダーが最初に着手できる取り組みは、2つの重大なビジネス成果をもたらす領域で、自身が率いるチームのスキル向上を図ることだ。具体的には、豊富な人材網を構築すること、および人事評価基準を財務成果に結びつけること、という2つの成果を達成するために、企業は人事リーダーが以下の対策を講じるのをサポートできる。