採用面接ではさまざまな問いが投げかけられるが、その中で答えるのが最も窮する質問の一つが、「あなた自身について話してください」ではないか。制約がないからといって、的外れな話を延々と続けていいわけではない。何を話しても構わないからこそ、相手のニーズを的確に捉えて、自分の価値を簡潔に伝える必要がある。


 採用面接で最も答えるのが難しい質問は、面接官にしてみれば取るに足らない質問かもしれない。

「では、あなた自身について話してください」

 一見、簡単そうだ。無条件パスのようではないか。仮想シナリオなし、実例を挙げる必要なし、技術的な課題もなし、あの恐ろしい質問「あなたの最大の欠点は何ですか」でもない。何でも話していい、というのだ。

 もちろん、簡単なように見えるだけだ。

 何でもどうぞという誘いが招くのは、チャンスよりも危険である。なぜなら、回答の枠組みが何も与えられていないのだから。そこには、真っ白で、手掛かりのないキャンバスがあるだけだ。あなたの心の中では、無数の疑問が渦巻いているだろう。

・私の人生について語るべきだろうか。
・職歴を一通り話すべきだろうか。
・趣味や好きな映画について話すべきだろうか。
・前職や前の上司について話すべきだろうか。

 この状況は、大規模なビジネスミーティングで、リーダーが参加者全員に「一人ひとこと話してください」と呼びかけた場合に似ている。ミーティングの時間は半分過ぎたのに、一巡するどころか一人が延々と話し続けている、という経験があるだろう。

 この困った状況は、私が主宰する論点の通し方教室やワークショップでもよく見られる。論点なしに話をしているパターンである。このような話し手は、論点の通し方がわからないか、論点を単なる概念、テーマ、事実、見解と混同しているかのどちらかだ。

 将来の雇用主があなたに求めているのは、論点(「私はこの役割のニーズを最もよく満たすことができる」)であって、感想文(「私のすべて」)ではない。だが、面接官のオープンな問いかけから、どうすれば具体的でカスタマイズされた論点に絞れるのだろうか。

まずは、自分と相手の時間を無駄にしないことから始めよう。

履歴書以上のことを語る

「あなた自身について話してください」という質問に対して、的を射た答えをするためにはまず、面接官がすでに履歴書を通して、あなたの職歴を知っていると認識することだ。したがって、リンクトインのページに基づいて独白を演じても意味はない。にもかかわらず、応募者はそうしてしまいがちだ。

 面接とは、資格を証明するというよりも、自分がいかにその役職にマッチしているかを示す場であると、覚えておくとよいだろう。そもそも資格がなかったら、面接に呼ばれていないのだから。

 キャリア戦略の専門家であるジョン・リーズは、面接にはオーディションのようにアプローチせよと勧める。「面接官が頭の中で映画を見ていると想像してみよう。その映画の中であなたはチームと仕事をし、上司にプレゼンをし、顧客やステークホルダーと話をしている」と、彼は言う。

 面接はまた、家庭生活や最近の休暇、趣味のパペットといった、個人的な情報を共有する場でもない。その機会は、面接の終わり近くにやってくることもあるだろうが、差し当たっては、せっかくのこの機会を利用して、しっかりした第一印象を残すことに集中しよう(たとえ面接官もあなたも本当にパペットが趣味だとしても、職を得る助けにはあまりならない)。

 この文脈において論点を通すには、2段階のプロセスがあり、少し準備が必要だ。第1段階では、組織がこの役職に対して、具体的にどのようなニーズを持っているかを特定する。第2段階では、そのニーズを満たす最高の人材として自分を位置づけるよう、答えを工夫するのだ。