県民性を考えるにあたってのポイントにはいくつかあるが、私が重視していることの一つに「辺境度」がある。これは、その県が地理的な中心地からどれほど隔たっているかを意味している。本州なら青森県と山口県(長州) 、四国は今回取り上げる高知県(土佐)、九州では鹿児島県(薩摩)と佐賀県・長崎県(肥前)が「辺境度」が高いことになる。青森県を除く県に旧国名を記したのはいうまでもない、4つ合わせると「薩長土肥」。幕末の時代、徳川幕藩体制を終わらせる明治維新の担い手となった四藩である。
四国の他3県とは峻険な四国山地で隔てられている高知県は、かつて陸の孤島であった。そのため、南北朝時代までは流刑地とされ、藤原師長、土御門天皇、尊良親王など、この地に流された人、それも〝思想犯〟系は少なくない。辺境の地であった薩長土肥の人たちは多かれ少なかれ、「権力・権威、何するものぞ」という反骨精神旺盛である。なかでも高知県人はその傾向が強く、彼らと議論をすると白黒がつくまでえんえんと続くから、途中で白旗を掲げてしまう他県人も多い。ましてやお酒でも入ったりすると、よけいである。高知県は昔から離婚率が高いが、なるほどと思わされる。
独創性に満ちたアイディアで
周囲をあっと言わせる
だが坂本龍馬に代表されるように、既成の価値観にとらわれず、自由奔放な考え方をする人が目立ち、独創性に満ちたアイディアを思いついたり、これまでにないやり方で事を進めたりなど、周囲をあっと言わせることもある。何が出てくるかわからない──そういう意味では、一緒にいて楽しい時間が過ごせる人たちともいえよう。
高知の男性の気質を称して「いごっそう」、女性のそれを「はったか」という。「いごっそう」とは、強情で頑固、自分の主張を変えないという意味だ。「はったか」は「八金」と書き、こちらは一度に4人の男性を手玉に取る(2個×4で八)ほどのオテンバのこと。どちらにしても、タフなことこのうえないという感じがする。ピンチに直面しても弱音を吐くことがない。そのあたりを上手にほめてあげると、最後の最後まで頑張りぬいてくれるはずである。
◆高知県データ◆県庁所在地:高知市/県知事:尾崎正直/人口:77万7914人(H21年)/面積:7105平方キロメートル/農業産出額:973億円(H19年)/県の木:ヤナセスギ/県の花:ヤマモモ/県の鳥:ヤイロチョウ
<データはすべて、記事発表当時のものです>