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病気やケガ、妊娠・出産など、誰しも現在のキャリアを中断する可能性がある。そして、そこまでにどれほどの実績を積み上げていたとしても、スムーズに再就職できるとは限らない。中断前と同等の地位や待遇を求めて挫折したり、経験と実績がありすぎることで敬遠されたりすることがある。再就職者は、次の仕事をどのように選べばよいのだろうか。本稿では実例をもとに考察する。


 中断していたキャリアを再開するとき、ジレンマにぶち当たる。いったいどのレベルで復帰するのが最適なのか。

 キャリアの中断前より低いレベルの仕事で復帰するプロフェッショナルは、自分を必要以上に安売りしたのではないかと不安になるだろう。採用側は採用側で、以前より低いレベルの仕事に、条件以上の経験を積んできた再就職者が応募してくることに当惑するかもしれない。一方、採用側が必要あるいは適切と見なすよりも高いレベルの仕事に戻るべきだ、と考える再就職者もいる。

 スー・ドーディックはかつて、サンフォード C. バーンスタインのシニア・ポートフォーリオ・マネジャーであり、最も高い地位にいる女性の一人だった。その後、キャリアを12年間中断したドーディックは、JPモルガン・チェースの再就職プログラムを完了した後、(以前より低い地位の)バイス・プレジデントとして再就職した。次の5年間に昇進して同銀行の基金・財団グループの株式担当部門の長になり、最近そこを辞めて、元同僚が家族で経営する会社に入った。

「復帰に際しては、少し謙虚に構えるべきです」と彼女は語る。「私の場合、12年間家族と過ごしたうえ、その間には2008年の金融危機が起こりました。どのくらい期待していいのかを見定めるのが難しい状況でした。本当に先が見通せなかったのです」

 ドーディックは3ヵ月の再就職プログラムを終えて採用された際、バーンスタイン時代の管理補佐がMBAを取得し、いまではJPモルガン・チェースのマネージング・ディレクターになっていることに気づいた。つまり、かつての部下が元上司を追い越したわけである。

「それで嫌な気分になる人もいるでしょうが、私は違いました」とドーディックは述べる。「私は一緒にいて楽しいと思える人たちと、楽しいと思える仕事をしたかっただけでした」

「再び仕事をすること」に焦点を合わせるのは、理にかなっている。「最初に就く仕事は、働いていなかった空白期間を埋めてくれるので、とても重要です」と、アドバンシング・ウィメンズ・キャリアズの創設者であり、女性のキャリアパスに関する専門家のミッシェル・フリードマンは語る。

「再就職者は、復帰から初となる仕事の地位や報酬について交渉しているときには、なかなかそう思えないかもしれませんが、キャリア中断後に初めて就く仕事ではなく、現在すでに仕事に就いていることに大きな付加価値があるのです。また、本格的な再就職プログラムに参加した場合、そうしたプログラムで得られるトレーニングや専門能力の開発、メンター制度は報酬の一部でもあります。再就職をしようとしている人が、何らかの意味で自分を安売りすることを心配したり疑問に感じたりしているならば、この点を考慮に入れることが重要です。さらに交渉の一要素として、あらかじめ設定した将来のある時点で地位と報酬を再検討するように、願い出ることもできます」