TETRA IMAGES/GETTY IMAGES

キャリアの初期は、会社の現在のやり方に貢献できることが評価される。そしてキャリア中期に差し掛かり、重要な意思決定を下す立場になると、今度は組織に違いをもたらすことが期待される。だが多くの人が、この変化に気づけていないか、気づいていてもリスクを伴う判断を下すことに躊躇してしまう。こうしたミッドキャリアが陥りがちな罠を、どうすれば回避できるのだろうか。


 意外に思うかもしれないが、キャリアの中で最も助けを必要とする時期は、働き始めた頃ではなく中堅に差しかかる頃、特に、意思決定を下す立場になってからだ。

 筆者(ジュリア・タング・ピーターズ)が取りまとめた調査研究では、大学で学んで専門職に就いている成人(米国の成人の16%を占める)500人が、仕事で重要な決断を下す際の自分の振る舞いについて、説明文にどのくらい当てはまるかを回答した。さらに、実際に決断がどのくらい成功したかも、1件ずつ評価した。

 結果は驚くべきものだった。ミッドキャリア層が下した意思決定のうち、成功したという自己評価は半分以下だったのだ。成功とは言えなかった意思決定に最も陥りやすい年齢は40~48歳。自分の意思決定を成功とは言えないと評価した人は、次のような説明文に、かなり当てはまると答えた。

・決定を下したときは日常の業務がかなり忙しく、戦略的に考える時間が十分になかった。
・当時は、あれでよかったのかと後から思い悩むことが多く、変化を起こしたいという気持ちを抑えていた。
・意思決定のプロセスのすべてが、ストレスフルで不安をかき立てると思っていた。

 言い換えれば、キャリア中期を迎え、企業を改善しうる決断を(さらには自分のキャリアを向上させ得る決断を)下す立場になったその瞬間から、多くの人が現状維持の罠に陥る。日常業務の管理に重点を置き、新しい方向性を定めるより、自分の安全地帯に留まろうとするのだ。

 キャリアをスタートさせたときは、自分には経験が足りないから、会社のオペレーションや慣習、文化を学び、効果的に貢献できる戦力になる方法を見つけようと考える。しかし、経験とスキルを重ねるにつれて、組織の収入や収益性、ブランドの評価の向上などに関連する責任が増えて、しかも、より複雑な責任を負うようになる。

 つまり、キャリア中期の専門職は、現状維持を超えるような仕事で評価される。目的にかなった違いを主導することを期待されているのだ。キャリアにおけるこのような変化を理解していないと、危険である。

 キャリアの途中で求められることが変わるという、有意義な変化に順応できない理由の一つは、標準的なミッドキャリアの管理職が、自分は間違いを犯したら失うものが多すぎると思っていることだ。

 個人的にも家庭でも責任が増えて、地位も収入も高くなるなか、安全策を取り、自分でコントロールできる決断を下すようにと、自分に言い聞かせる。意思決定に際し、変化のリスクを過大評価して、現状維持のリスクを過小評価しているのだ。

 ただし、そのような管理職のパフォーマンスが低いという意味ではない。彼らは基本的に、何年も勤勉に働いてマネジメントを行い、結果を出している。ただし、目的のある変化をもたらすような新しい解決策やアイデアを避けているうちに、チャンスや昇進、金銭的な報酬が彼らの手をすり抜けていく。キャリアで行き詰まりを感じ、自分が過小評価されている、働きすぎだと思い始める。