環境負荷低減に資する農産物に対する認識の「底上げ」
──消費者からは、「有機農産品の考え方は分かるが価格が高い」とか、「生産者の取り組みが見えにくい」といった声も聞かれます。
横山 持続可能な食料システムを構築するためには、環境負荷低減の取り組みの重要性を消費者の皆さまにご理解いただき、生産者の努力や取り組みが市場で評価されることが必要です。このため、生産者の環境負荷低減の努力の「見える化」を進めています。2022年度は、生産者の栽培情報を基に温室効果ガス削減効果が容易に算定できるツールによって、その効果を等級で表示した農産物について、店頭での実証販売を行いました。もう一つは、農林水産分野におけるカーボン・クレジットの推進です。温室効果ガスの排出削減・吸収量をクレジットとして国が認証し、取引を可能とするJ‐クレジット制度は、農林漁業者等が削減・吸収の取り組みにより生じるクレジットから販売収益を得ることができるため、今後の活用が期待されています。そうした市場での評価、農産物の価格が、生産者にとっても消費者にとっても当たり前になるという意味での認識の「底上げ」を図っていきたいと考えています。
──「食料・農業・農村基本法」の見直しに向けた検討が進められていますが、そこで「みどり戦略」はどのように位置付けられそうですか。
横山 現在の基本法は1999年に制定されましたが、この四半世紀で環境や持続可能性に対する人々の意識が大きく変わりました。農業についても、多面的機能をはじめ、環境にとってプラスになるものと考えられていましたが、実際には環境に負荷もかけています。いかに環境と調和した生産活動を続けていくかが、これからの農業の大きな課題の一つです。また、環境負荷低減によって生じるコストを誰がどう負担するのか。生産者に努力を求めるだけでなく、事業者、消費者にもご理解・ご協力をいただくことが重要です。いのちを支える「食」と安心して暮らせる「環境」を未来の子どもたちに継承していくため、必要な施策の検討をしっかりと進めてまいります。
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