超音波センサーで魚の食欲レベルを測定し自動給餌する

トライアングルエヒメ事例2:AI給餌機の実装でコストを削減、持続可能な養殖経営を目指すAI給餌機の実装フィールドに選ばれた宇和海の戸島の海に浮かぶいけす(AI給餌機は白色)。実装化においては、愛媛県漁業協同組合をリーダーに愛媛県漁業協同組合うわうみ支所 戸島事業所、養殖業者、給餌機メーカーのパシフィックソフトウエア開発、愛媛大学大学院農学研究科、宇和島市水産課らで産官学のコンソーシアムが結成された

宇和島市の沖合にある戸島は、面積2.4平方キロメートルの小さな島である。リアス海岸で水深が深く、黒潮由来の暖かい海域であるため、シマアジやブリなどの養殖が盛んだ。2022年10月から、この地でAI搭載のスマート給餌機(以下、AI給餌機)の実装加速化プロジェクトがスタートした。

同プロジェクトに参加したのは2人の養殖業者。その1人である和家紀彦氏に、AI給餌機を搭載したいけすに案内してもらった。一つのいけすで約1万匹のシマアジが育つ。実装したAI給餌機は、パシフィックソフトウエア開発(高知県)のインターネット自動給餌システム「餌ロボ」。プロジェクトでは、養殖いけす五つのうち、二つに「餌ロボ」を設置。残り三つは従来型のタイマー式給餌機を設置して、AI給餌機の効果を比較検証している。

トライアングルエヒメ事例2:AI給餌機の実装でコストを削減、持続可能な養殖経営を目指す養殖業者の和家紀彦氏。「次世代を担う若い人たちがスマート養殖に興味を持ってくれたらうれしい」と語る

「『餌ロボ』に期待しているのは、無駄になる餌を削減することです。シマアジは食欲にムラがあるため、従来のタイマー式給餌機では、食べずに海底に落ちてしまう無駄餌がとても多いのです。実は養殖にかかる経費の約7〜8割は餌代で、最近は配合飼料の価格が高騰している。無駄餌を抑えて適正な給餌ができれば、経費を大きく削減でき、成長するシマアジのサイズも均質化できると考えています」と、和家氏は説明する。