先進のデジタル技術を愛媛の地域課題解決に活用してほしい──。愛媛県の「デジタル実装加速化プロジェクト」には、そんな思いが込められている。具体的には、愛媛県内を実装フィールドとして、全国の民間事業者(コンソーシアムを含む)から企画提案を募集。デジタル技術の実装や県内への横展開の実現性の高い提案を選定し、 1案件最大3000万円の委託費用を提供、県が実装事業を積極的にサポートするというプロジェクトだ。2022年4月に1次公募、同年6月に2次公募が実施され、応募総数298案件の中から38事業が採択された。この応募総数は予想を大きく上回るものだったという。
「デジタル実装加速化プロジェクト」は、中村時広知事の強力なリーダーシップの下、入念な計画に基づいて進められた。発端は5Gが世の中に出始めた5年前。中村知事は東京の複数のIT企業でヒアリングを行い、「今動きださなければ周回遅れになってしまう」という危機感を抱いた。「その場で県庁に電話して、デジタルプロモーション戦略室(現・デジタル戦略局)をつくるように伝えました」と中村知事は振り返る。そして財政の準備が必要だと考え、機動的に動けるように130億円の基金を積み上げた。
「愛媛県のデジタル施策の根幹には、行政・産業・暮らしの3分野で県民の生活を豊かにするという視点があります。愛媛県は1次産業が盛んですが、人口減少や高齢化による労働者不足という課題があります。そこに先進のデジタル技術を導入すれば、生産性を向上させることができ、後継者となる若い世代の参入にもつながる。そのためには、課題解決能力を持つ民間の協力を得て、先進のデジタル技術を現場に実装していく必要があると考えたのです」と中村知事は同プロジェクトの狙いを語る。そして今回デジタル技術を提供する民間事業者は、県内に限定せず全国枠での公募とした。