トライアングルエヒメ事例2:AI給餌機の実装でコストを削減、持続可能な養殖経営を目指す「餌ロボ」の前に立つ和家氏。給餌の回数は1日5回程度。給餌の労力削減と無駄餌を抑えることを目指した

AI給餌機の「餌ロボ」はAIを活用したスマート給餌機で、給餌機に搭載した超音波センサーが魚群の様子を測定する。シマアジは餌を食べ始めると上層に集まり、満腹になると下層に沈んでいくという特性がある。その行動から食欲具合を判断し、適正なタイミングで、適正な量の給餌を自動的に行う。超音波センサーのため、魚同士の遮蔽や、昼夜の光量差、天候による海水の濁りなどに左右されることなく、魚群を正確に捉えることができる。

いけすの状態は、スマートフォン専用アプリで見ることができる。画面には、天候・水温・日照度に加え、深度別の魚群状態や活動レベル、10段階の食欲レベルや給餌量、餌残量などが表示される。「餌ロボ」にはAI捕食判定プログラムが組み込まれているため、給餌量やスピードを自動調整することで、海底に破棄される餌を削減してくれるのだ。リアルタイムの様子をタブレットで確認できるので、いけすへ行く回数を減らすこともできる。

トライアングルエヒメ事例2:AI給餌機の実装でコストを削減、持続可能な養殖経営を目指す「餌ロボ」から餌が落ちると魚が群がり海面が波立つ

収入が安定しない養殖業、後継者不足を解決する一歩に

「AI搭載といっても、まだ万能ではありません。例えばシマアジは食欲がなくても海水温が高いと上層に集まることがあります。食欲があるのかないのか、そのあたりは養殖業者の判断やノウハウが必要で、給餌データを分析しながら柔軟に給餌スケジュールを組んでいく必要があります。経験とAIをうまく連動させていくことが重要なのです」(和家氏)

シマアジはアジの中でも育て方が難しい高級魚で、輸出量も増えて生産量は増加している。とはいえ、養殖魚は病気のリスクがあり、相場も毎年変動するため、収入が安定しないという側面がある。そのため近年は戸島でも、高齢化に伴って廃業者が増え、後継者不足に悩んでいる。AI搭載のスマート給餌機は、給餌の労力削減と餌の無駄を抑えることで、そうした人手不足や生産コストの増大を解決する大きな一歩になる。

トライアングルエヒメ事例2:AI給餌機の実装でコストを削減、持続可能な養殖経営を目指すタブレットでいけすや給餌の状況を確認し、遠隔操作する

「『餌ロボ』はまだ導入したばかりで、どの程度効果があるのか、正確なデータはこれからですが、餌残量が多くなっているのは事実です。このプロジェクトがうまくいけば、戸島から宇和海(うわかい)全域へAI給餌機の普及が進み、多様な養殖の効率化に貢献できるはず」
と語る和家氏。養殖のシマアジは、約2〜2年半で40センチメートルほどに成長し市場に出荷される。今春から始まる稚魚の養殖にも「餌ロボ」を導入する予定で、その成果は稚魚が順調に成長して初めて判明する。戸島におけるチャレンジは始まったばかりだ。

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