低コストでスピーディーに導入できる屋内位置情報サービス

地下鉄の駅で、行き先に最も近い出口を探そうとスマートフォンの地図アプリを開いたら、現在地を示してくれるはずの“点”が地図上に表示されず、自分がどこにいるのかさえ分からなくて困ってしまった――。そんな経験をしたことのある人は多いはずだ。

GPSは、屋外の位置情報は正確に測位するものの、建物や地下に入ると、その精度は格段に落ちてしまう。電波が届かないわけではないが、壁や柱などを回り込んでスマートフォンに届くため、正しい位置を測位しにくくなるのだ。

そうしたGPSの欠点を補うため、屋内でも正確な位置が測位できる位置情報サービスが幾つも開発されている。しかし、大部分のサービスは、電波を発信するビーコンなどの専用機器を屋内に取り付ける必要があり、多額の費用がかかることが導入の大きなネックとなっている。

「測位の精度を上げるには、一定の距離や面積ごとに、幾つもの装置を据え付けなければなりません。地下鉄の駅やショッピングモール、病院のように大きな建物では、膨大な数の装置が必要ですし、多層階の建物ではフロアごとに設置する必要もあります。建物の規模が大きくなるほど、初期設備投資は相当な金額に上るはずです」と語るのは、川崎重工業社長直轄プロジェクト本部PNT推進部の野田孝仁部長である。

そんな既存の屋内位置情報サービスの弱点を解消し、低コストでありながら、かつスピーディーに導入できるサービスがある。川崎重工業の「iPNT-KTM」(アイピントケイ)だ。

次ページからは、高精度でありながら低コストを実現した画期的な技術と驚きのコストの詳細を紹介するとともに、そもそもなぜ、重厚長大企業の代表格である川崎重工業がこの新事業に乗り出したのかを明らかにする。